店頭一律10%でも、事業者は8%で管理しなければならない
店頭で10%の商品を販売し、8%対象商品か非対象商品かの判別を還付申告センター側でするとしても、小売店や飲食店でも、どの商品が対象なのかはレジ側で管理せざるを得なくなるだろう。消費者に、10%の商品か8%の商品かを国が告知しても、消費者はそれを常時覚えているわけではない。当然、購入時や飲食時に店側へ問い合わせる。小売店は、消費者が購入する前に8%かどうかを知らせる必要があるので、値札や棚カードなどで消費者に告知することになる。飲食店はメニューで告知することになるだろう。
しかし、消費者と国(還付センター)とを結びつける客観的な証拠はレシートになる。そうなると、消費者はレシートにどの商品が8%なのかを印字(印刷)してほしくなる。いちいち還付センターに問い合わせたり、ネットで検索して調べるより、レシートに8%と表示してあれば、8%の商品や飲食をどのくらい購入したかがすぐわかる。
「そんなサービスを事業者がする必要はない」というかもしれないが、還付金額が間違っているのではないかと思う消費者は、還付センターだけでなく、小売店や飲食店に購入履歴を問い合わせる可能性がある。その時に、消費者のレシートと事業者側のデータを照合し、どれが8%対象商品かを調べ、電卓で計算するようなことは、とても事業者側ではできない。レシートに8%対象商品の金額はいくらかを印字したほうが、事業者にとっても消費者にとっても楽になる。
還付センターで対象品を区別するのは負担が大きい
マイナンバーカード自体やスキャナーで、8%対象商品かどうかを判別するのは難しい。そうなると、還付センターで個々の消費者のすべての買い物・飲食履歴のデータを集計して、判別することになる。これは、システムとしてはかなり重い。それだけではない。客との金銭のやり取りというのは、さまざまなトラブルが発生する。後述するが、こうしたイレギュラー対応を還付センター側でどこまで可能かという不安がある。
8%対象商品だけのデータを事業者からセンターに送信するほうが、センターとしての負担は軽くなる。そうなれば、事業者側で8%と10%の商品データを管理しなければならない。その場合、消費税は全品一律10%となり、消費者への還付だけのために8%の商品管理をしなければならなくなる。センターの負担を軽くすれば、事業者の負担が大きくなる。
これでは、店頭では10%でも、実質事業者側で軽減税率対応をすることになる。財務省案でも、事業者の負担が軽減されるとはいえない。