日高屋では会計時に、麺類やライスの大盛が無料になる『モリモリサービス券』を配っており、これはリピーターを獲得するうえで非常に効果を発揮しているように感じます。また、夏季限定の『黒酢しょうゆ冷し麺』(530円)や、『ごま味噌冷し』(550円)のような季節メニューも取り入れていますので、こういった工夫が日高屋に来店する楽しさを生み出しているのは確かです。
ですが、日高屋でなければ食べられないというメニューの少なさこそが、日高屋の弱みだと思えてなりません。というのも最近は、安いからそこの店に行くというよりは、価格が高くてもそれ相応の味を求めて店を選ぶ人が増えてきています。私も日高屋はときどき利用していますが、ラーメン1杯だけ食べて帰るという人はほとんど見かけませんし、もっと本格的なラーメンが食べたかったら当然、別の専門店に行っているはずなのです」(重盛氏)
日高屋の客数減には、客の消費志向の変化が響いているということか。ほかにも重盛氏は、日高屋の弱点について次のように指摘する。
「日高屋ではタバコが吸えるというのが、客に“選ばれない価値”をつくってしまっているのでしょう。駅前に出店している以上、広い空間を持った日高屋の店舗は、そこまで多くありません。店舗の1階は喫煙だが、地下は禁煙……というようなかたちで分煙にしたとしても、店に入った瞬間にタバコの煙はどうしても流れてきますから、そこで避けられてしまっている感は否めないですね」(同)
“プレミアム日高屋”やデリバリー専門店をつくってみるのも有効?
今年5月末の時点で、日高屋の直営店舗数は428(『来来軒』などの別業態も含む)。運営元のハイデイ日高は将来的に“首都圏600店舗体制”を目標としているが、その実現性を、重盛氏はどう判断するのか。
「600店舗の前に、飲食業界では“500店舗の壁”があるとよくいわれています。駅前の好立地な物件の空きがそんなに都合よく出てくるのかという問題もありますし、人材不足の問題もありますので、日高屋が500店舗の壁を克服するまでの道のりは、今のままでは困難だといえるでしょう。
同じ中華料理チェーンということで、日高屋は『幸楽苑』とよく比較されますが、幸楽苑は人通りの多いところに限らず、郊外にも出店しています。日高屋も、仮に駅前ではなかったとしても『この店まで足を運ばないと食べられないプレミアムなメニューがある』といった具合に、新しい店舗展開をしてみてもいいのかもしれません。