要するに、『どこへ行っても変わらない味がある』というチェーン店のメリットが、デメリットにもなってしまっているのが日高屋の現状なのです。一例として『餃子の王将』は、2016年から『GYOZA OHSHO』という女性向けの新コンセプト店舗をスタートしていますが、日高屋もこのように、業態を横方向へ広げるチャレンジをするべきではないでしょうか。今の日高屋は、殻を破るのを恐れているような印象を受けます。
なお、餃子の王将といえばデリバリーサービスも行っていますので、その向こうを張り、日高屋がデリバリー専門店をオープンしてみても面白いですね。それなら駅前に出店する必要はなく、イニシャルコストも抑えられます」(同)
とはいえ日高屋も、ただ黙っているわけではなく、新たなアプローチを少しずつ始めているようだ。
「日高屋は店頭で、持ち帰り用の冷凍餃子を販売しています。これなら店舗の手間や人件費をかけなくても販売額を上げることができ、今年10月の消費増税を迎えたあとでも、軽減税率の対象となる。これが通販ですと、送料がかかってしまうので割安感がなくなりますから、『日高屋の味をご家庭で』という戦略を今後どこまで浸透させていけるのかは、ひとつの注目ポイントでしょう。
それと、日高屋では券売機の導入も進めているところです。これにより店員の負担を軽減し、オペレーションを改善できるわけですが、もし日高屋の券売機がこれからQRコード決済に対応すれば、こちらにも軽減税率が適用されます。また、券売機なら多国語表示にすることもできるため、来年開催の東京オリンピックをにらんだ施策も打ち出せるのではないでしょうか。
そういった意味で先行しているのは、牛丼チェーンの『松屋』。券売機でのQRコード決済や多国語表示はもちろんのこと、一部のセルフサービス店舗では、生ビールやハイボールといったアルコールメニューは、機械にお金を入れて自分で注げるシステムになっています。
日高屋をちょい飲みで利用する客がお酒を1杯しか飲まないというケースは少ないですし、こうした部分で店舗コストを削減しつつ、よりクオリティの高い商品を提供していけるようになれば、客には今まで以上に喜ばれるはずです」(同)
最後に重盛氏は「日高屋は、よその大手チェーン店などの“いいとこ取り”を考えていく必要があります」と語る。日高屋がさらなる成長を期すには、決して守りに入ることなく、昨今の時流を乗りこなさなければならないのだろう。
(文=A4studio)