オリンパスや東芝の不正会計問題によって、公認会計士や監査法人の力量に国内外から厳しい視線が向けられる中、公認会計士に新たな権限を与えて会計監査の質を高める案が浮上しているのだ。
9月11日、青山学院大学で日本監査研究学会が開かれた。同学会には、金融庁幹部も出席し、公認会計士に反面調査の権限を与えることに言及、「立法措置もあり得る」と明らかにしたという。
反面調査とは、税務署が行う税務調査のひとつだ。企業の取引先や金融機関に対して、実際の取引の有無を確かめるもので、原則として調査を拒否することはできない。
金融庁幹部が言及したのは、この権限を公認会計士にも与え、不審な点が多い企業や、監査に非協力的な企業の会計処理を精査できるようにする案についてだ。
監査法人に強制調査権はないが、それに準じる権限を与えることで、会計に対する信頼回復に役立つのではないか、という期待が膨らむ。架空取引などによる粉飾決算を見破るには、有効な手段だろう。
同学会の資料では、反面調査の権限について触れておらず、金融庁が「公認会計士の反応を見るために、アドバルーンを揚げてみた」という面もあるだろう。しかしながら、信頼が揺らいでいる日本の企業会計に対して、「金融庁が強い危機感を抱いていることの表れ」(同学会関係者)といえる。
金融庁は、会計監査の在り方や問題点を再点検しつつ、質を高めるための方策を矢継ぎ早に打ち出している。東芝の不正会計問題では、会計監査を担当していた新日本有限責任監査法人に対して、日本公認会計士協会だけでなく、金融庁の公認会計士・監査審査会も調査に入っている。
会計監査の改善に乗り出した金融庁
今月6日には、金融庁が財界関係者や学者、アナリストなどを招いて会計監査の在り方をあらためて検討する有識者会議を開いた。反面調査権付与の検討は、そうした取り組みの一環だろう。
ただ、公認会計士や監査法人が反面調査を行うのは、クライアント企業の会計処理に深刻な問題や疑義が生じている場合であり、その時点でクライアントとの信頼関係が崩れてしまっている可能性が高い。監査法人がクライアント企業との関係を悪化させたり、監査報酬をみすみす逃したりしてまで、厳しい調査を行うかどうかは疑問だ。