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桶谷 功「インサイト思考 ~人の気持ちをひもとくマーケティング」

日産ノートe-POWER、なぜ1位に?「ハイブリッド」と言わず「革新的なEV」浸透に成功

文=桶谷功/株式会社インサイト代表取締役

消費者の「電気自動車」への懸念を解消

 さらに、このe-POWERは、「電気自動車の新しいカタチ」として電気自動車の弱点を解消しています。電気自動車がエコカーとして注目されながらも、なかなか普及が進まない理由のひとつに、「電気自動車は走行距離が短い」という消費者の不安があります。充電ステーションの数も限られているので、いくらエコであっても、遠出している最中に立ち往生するのだけは避けたいと思うでしょう。

 実際には、電気自動車の走行距離は伸びてきているのですが、それでも、消費者がいったん抱いたマイナスイメージは、なかなか払拭できないものなのです。

 それを、ノートe-POWERでは「充電を気にせず、どこまでも走れる」ことをアピールし、消費者の不安を払拭しました。「電気自動車の新しいカタチ」を単なるイメージではなく、消費者にとって意味のある、魅力的なベネフィット(便益)に結びつけたわけです。

 ハイブリッドであれば、走行距離が長いのは当たり前ですが、電気自動車と位置づけたことで、この「走行距離の長さ」が大きな魅力点になったのです。このように、「人々の不安を解決する」意味をもった技術は、人々から歓迎をもって受け止められます。いかに「人々の不安」を見つけ出すか、そして、技術をいかにその解決策として打ち出すかが、重要なのです。

「体験型」のコミュニケーションの打ち出し

 また、ノートの広告やプロモーションでは、このe-POWERがもたらす電気自動車ならではのドライビングフィール(運転感覚)を体験してもらうことに注力しています。e-POWERは純粋な電気自動車ではありませんが、電気モーター駆動だけで走る運転感や走り心地は、電気自動車のものと同じだからです。

 先ほどの「走行距離の不安の解消」が電気自動車のネガティブ面の払拭なのに対し、「ドライビングフィール」は、電気自動車ならではのポジティブ面のアピールです。具体的には、アクセルを踏んだときに強い瞬発力を感じ、逆にアクセルを弱めたときに強い減速力が働く。つまり、ブレーキを頻繁に踏まなくても、アクセル操作だけで簡単にスピードをコントロールでき、運転しやすい。

 この感覚は、試乗してもらってはじめてわかるものなので、広告やプロモーションは、販売店と連動して、いかに試乗して体験してもらうかを目標にしています。さらに、このドライビングフィールの体験は、ノートの販売のみならず、日産がリーフで先行する電気自動車というものの魅力を多くの人々に知らしめる効果があったと思われます。

桶谷功/株式会社インサイト代表取締役

桶谷功/株式会社インサイト代表取締役

大日本印刷(株)を経て、世界最大級の広告代理店 J.ウォルター・トンプソン・ジャパン(株)戦略プランニング局 執行役員。ハーゲンダッツのブランド育成などに貢献。2005年、著書「インサイト」(ダイヤモンド社)で日本に初めてインサイトの考え方を体系的に紹介。2010年に独立し、(株)インサイト設立。マーケティング全般のコンサルティングを行う。コンサルティング実績は、食品・飲料・日用品・クルマ・医薬品・百貨店・ファッションEC・C2C・テック系サービスと多岐にわたる。インド・中国などでのインサイト探索・戦略開発や、イノベーション開発、独自メソッドの導入・教育も行う。他の著作に「インサイト実践トレーニング」「戦略インサイト」(ともにダイヤモンド社)など。企業・協会等での講演やセミナー多数。日本広告学会会員。グロービス経営大学院MBA講師。

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