鳥貴族が2014年の上場以来、初の赤字に転落した。9月13日に発表した19年7月期の単独最終損益は、2億8600万円の赤字(前期は6億6200万円の黒字)だった。不採算店の閉鎖に伴う減損損失14億円を計上したことが響いた。
売上高は前期比5.5%増の358億円、営業利益は29.2%減の11億円だった。増収だったものの、増収率は前の期(15.8%増)から大きく低下した。営業利益は大幅減となり、売上高営業利益率は3.3%(前の期は5.0%)と、近年まれに見る低水準に陥った。
17年10月に実施した値上げ以降、低迷が続いている。既存店売上高は18年1月から19年8月まで20カ月連続でマイナスだ。客数は最近こそ回復傾向にあるものの、客単価が18年10月からマイナスが続いており、売上高は依然として低空飛行が続いている。
8月の既存店実績は、客数が前年同月比1.1%減、客単価が3.0%減となり、売上高は4.1%減だった。19年7月期(18年8月~19年7月)は客数が4.2%減、客単価が1.1%減、売上高は5.2%減だった。
値上げのほかに自社競合も影響した。鳥貴族は大量出店を進めた結果、自社店舗同士での顧客の奪い合いが目立つようになった。
鳥貴族は既存店の不振を受け、21年7月期までの中期経営計画を3月に取り下げた。大量出店を改め、新規出店を抑えて不採算店の閉鎖を進め、既存店の立て直しに専念するようにした。この方針を受け、増加傾向にあった店舗数は減少に転じた。中期経営計画取り下げ直前の2月末時点には全国に678店を展開していたが、8月末時点では659店まで減った。
自社競合が理由で業績悪化に苦しむ外食チェーンは少なくない。最近でいえば、ペッパーフードサービスが展開するステーキチェーンの「いきなり!ステーキ」が最たる例だろう。「いきなり!ステーキ」は、大量出店で生じた自社競合が一因で、既存店の業績が低迷するようになった。
ただ、「いきなり!ステーキ」の国内店舗数は8月末時点で478店と、鳥貴族ほど多くはなく、また鳥貴族が3大都市圏(首都圏、東海、関西)に限って出店しているのに対し、「いきなり!ステーキ」は全国的に展開しているため、「いきなり!ステーキ」の自社競合は鳥貴族ほどではないだろう。そのためか、「いきなり!ステーキ」は現在も新規出店を進めており、店舗数は増加傾向にある。
抜本的対策は見当たらない
鳥貴族は不採算店の閉鎖を進めているが、それでも既存店の不振は今後も当面続くと考えられる。10月の消費増税が立ちはだかるためだ。鳥貴族は増税分を価格に転嫁するとみられるが、そうなれば価格高騰を嫌って客足はさらに遠のく可能性がある。また、消費増税に合わせて実質値下げをする外食チェーンもあり、こうした競合店に客が流れる懸念もある。
たとえば、サイゼリヤはボトルワインなど一部メニューを除いて現行の税込み価格を据え置く。店内飲食の場合は、本体価格を下げて調整する。この場合は実質値下げとなる。サイゼリヤはワインなどの酒類を扱っており、一般的な居酒屋よりも安く飲めるとして人気が高まっている。サイゼリヤのように酒類を扱う外食チェーンのなかに、実質値下げをするところがあるため、鳥貴族は顧客を奪われる可能性がある。
消費増税時に、酒類や外食を除く飲食料品の税率が据え置かれる「軽減税率」が導入されることも、逆風となりそうだ。