消費者が企業活動に抱く疑問を考察するサイト ビジネスジャーナル ⁄ Business Journal
インボイス導入時には、こうした益税の廃止が必至と見られている。宮沢氏をはじめ政府・連立与党はそろって、「事業者の事務手続き負担を増やせない」というもっともらしい理屈で、インボイス導入先送りを既成事実のように扱っているが、実際は来年夏の参議院選挙を前に益税廃止を打ち出せば、選挙で不利になると見て、先送りを目論んでいるのではないかという見方も根強い。
仮に、インボイスを導入し益税制度を廃止すれば、年5000億円程度の税収を獲得できるとの試算もある。安易なインボイス導入の先送りはやめるべきだ。販売する商品に適用する消費税率と税額を記入したインボイスを発行することが、事業者にとって政府・与党が連呼するほど大変な負担とは思えない。
財源は消費増税分の枠内に限るという宮沢氏のロジックは、税制の専門家の論理としては筋論なのだろう。しかし、始まってもいない数年先の増税分の使途をさっさと決めて、それがいずれも削りにくい予算ばかりだというのは、納税者から見れば「お上の論理」でしかない。
また、消費税率の10%分すべてではなく、増税分の2%しか軽減税率の対象にならないというのも、納得のいかない議論である。欧州では、標準税率20%の英国が食料品や新聞・雑誌に0%の軽減税率を適用しているし、標準税率20%のフランスも食品に5.5%、新聞・雑誌に2.1%の軽減税率を設けている。
人間が生きていくのに不可欠な食品に税金をかけるのは、税と引き換えにしか国民の生存権を認めないというに等しい行為だ。食品ぐらいは、消費税ゼロに戻すぐらいの度量が政府には期待される。
予定通り17年4月に消費税率を10%に引き上げるとすれば、政府は3~4兆円の税収増が見込めるはずだ。その半分ぐらいを費やして本格的な軽減税率を導入しない限り、納税者は納得しないのではないだろうか。必至とされる将来の10%超への消費増税のためにも、きちんとした軽減税率制度づくりが期待されている。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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