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ドコモが抱える「不安」 顧客大量流出の深刻な不振から、急回復に見えるが…

文=佐野正弘/ITライター
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 次の要素はコスト削減だ。ネットワーク設備投資やマーケティングのコスト削減を一層進めることにより、15年上期で1,300億円のコスト削減を実現。今期の当初予想を上回って推移していることから、当初予想の2,100億円から、100億円増の2,200億円と削減額を上積みしている。

 そして3つ目は、本丸となる通信事業が回復基調にあることだ。純増数は前年上期との比較で1.6倍の190万契約に達したほか、MNPの純減数も、やはり前年上期と比べ8割減の4万契約に抑えられている。なお新規契約に関しては、ドコモの回線を間借りしている仮想移動体通信事業者、MVNOの契約が「半分くらいかなと思ってもらえれば結構」(NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏)と好調な伸びを示しており、ドコモ契約者の純増やMNPの伸びを支え、業績回復に貢献していると見ることができそうだ。

 また最大の懸念とされてきた、新料金プランにおけるパケットパックの選択率も、「データSパック」を選ぶ人の割合が大幅に減少。より大容量で料金が高い「データMパック」以上の選択率が8割を超えたことから、月間電気通信事業収入(ARPU)も下げ止まり傾向にあるようだ。

 これらの内容を総合するに、通信料収入はまだ回復途上にあるものの、スマートライフ事業が好調に推移し、コスト削減が一層進んだことが、ドコモの業績回復につながっているといえよう。

ドコモが抱える「不安」 顧客大量流出の深刻な不振から、急回復に見えるが…の画像2スマートライフ事業が前年上期と比べ約3倍に伸びたことが業績をけん引している

通信事業の真の回復にはいくつかの課題

 ではドコモの業績は、今後このまま順調に回復していくのか。そこにはまだ不安要素があるのも事実だ。

 最も懸念されるのは、やはり本業である通信事業の不調が続いており、現在はあくまで回復途上にあるにすぎないということ。特に純増数の伸びに関しては、MVNOが支えている部分がかなり大きいことから、ドコモ自体のがんばりが一層求められていることに変わりはない。

 通信料収入に関しては、さらにいくつかの懸念がある。

 ひとつは他キャリアに対抗するべく新たに導入した、5分以内の通話が無料になる「カケホーダイライト」プランの影響である。カケホーダイライトは、通常のカケホーダイと比べ基本料が1,000円下がることから、同じデータMパックを契約したユーザーであっても得られる月額料金は、単純計算で毎月1,000円下がることとなる。加藤社長によると、現状カケホーダイライトを選ぶユーザーは新規契約者の約3割とのことだが、今後こちらが大きく伸びていくようであれば、そのことが業績に与える影響が懸念されるところだ。

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