リプトン、卓越したブランド戦略 楽天、ソフトバンク…「神話化」される創業者たち
古くは、HP(ヒューレット・パッカード)社が1939年に、ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードによってパロアルトのガレージから創業されたという神話をもっています。近年の例では、グーグルの2人の創業者、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、98年カリフォルニア州のメンロパークのガレージで創業しており、そのガレージは現在、観光名所になっているそうです。
これ以外に、「イノベーション経営者」とでもいうべき創業者ブランドタイプもあります。上記の2つのタイプほどパーソナリティは強烈ではありませんが、世間の荒波を戦略的に切り抜けて、創造的な提案を行い、世界を変革したというタイプです。シャネルやエジソンはこうしたタイプかもしれません。
もちろん実際の経営者はこの3つのタイプの混合タイプであることが多いのです。しかし、より明確な人物ブランドを形成するためには、タイプの方向性をひとつに絞って決める必要があります。
ポジショニングとコミュニケーション
創業者ブランド化を実行するとき、次の点に留意する必要があります。
まず、創業者がどの人物タイプにあてはまりそうかを考えることです。その創業者の史実に当たる必要もありますし、現在のその会社のブランドイメージと合致していなければなりません。
さらに、その人物について、史実を確認し、語るべきエピソードを収集します。その人物の伝記を作成する必要があるでしょう。また、重要なことは、その人物のビジュアルを戦略的に選択することです。その創業者をよく表し、象徴としてふさわしいビジュアルを選択することが望ましいのです。訴求すべき人物像をつくりあげた後は、それを実際のコミュニケーション活動に反映させなければなりません。
有力な方法でかつ、よく行われているのが書籍の出版です。その人物についての伝記、あるいは自ら語る、という形式で書物を出版するやり方です。出版によってその本がパーソナルブランディングの出発点になることはよくあります。
可能な限り客観的で権威のある書き手に書いてもらうこともポイントです。たとえば、P&Gはかつて自社の歴史データを歴史家にゆだねて彼らの執筆によって出版してもらい、そこには同社の成功も失敗も信頼できるかたちで記述されています(『P&Gウェイ:世界最大の消費財メーカーP&Gのブランディングの軌跡』<東洋経済新報社、2013年>)