公共図書館のあり方をめぐる議論に火をつけたのが、大手レンタルビデオチェーン、TSUTAYA(ツタヤ)を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)だ。CCCが指定管理者となって運営する「ツタヤ図書館」が火元である。従来の図書館像を大きく変えるツタヤ流の手法に批判が噴出する一方、地域活性化の決め手を欠く自治体からは期待が高まっている。
ツタヤ図書館の第1号は、2013年4月に開館した佐賀県武雄市図書館である。スターバックスコーヒーなどを併設した東京・代官山の蔦屋書店を見た樋渡啓祐・武雄市長(当時)が「代官山蔦屋書店を図書館のかたちでもってきてほしい」とCCCの増田宗昭社長に要請したのが始まり。CCCが3億円、武雄市が4億5000万円の計7億5000万円かけて武雄市図書館を改装。運営はCCCに委託された。
蔵書数20万冊。図書の貸し出しにはCCCのポイントカード「Tカード」も利用できて、自動貸出機を利用すれば1日1回3円分のポイントが貯まる。蔦屋書店とスターバックスコーヒーが併設されており、コーヒーを飲みながら雑誌を読むことができる。年中無休で朝9時から夜9時まで利用できる。
人口が5万人の小さな温泉町の図書館の来館者数は改装前の3倍、2年半で200万人を突破した。武雄図書館は地方創生の画期的な手法と称賛された。
しかし、リニューアルオープンから2年経ち、ツタヤ流に疑問の声が上がってきた。古い本ばかりで新しい本がまったく入ってこない。武雄図書館に対する不満が次第に高まっていった。今年7月には、住民の情報開示請求で10年以上前の資格対策本や埼玉県のラーメン店ガイドなどを開館時に購入していたことが判明した。それらの本をCCCが出資する古書店から買ったことから「ツタヤの在庫処分だ」と批判が高まった。
さらに、図書館改革を積極的に進めた前武雄市長の樋渡氏が7月、CCCの子会社であるふるさとスマホ株式会社の代表取締役社長に就任していた。「天下りではないか」で追及されたことでツタヤ図書館への批判が一気に噴出した。
その最中の10月1日、CCCが指定管理者となって運営する2館目の公共図書館、神奈川県海老名市中央図書館がリニューアルオープンした。同図書館でもタイの風俗店を紹介するガイド本などが蔵書にあることが判明し問題になった。
ツタヤ流のあまりの悪評に、愛知県小牧市では10月4日、新図書館建設計画が住民投票で否決され、CCCとのアドバイザリー契約が解除された。来年3月には宮城県多賀城市で新図書館が開館する。岡山県高梁市、山口県周南市でもツタヤ図書館の計画が進む。