プレステージブランドとして「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」といった高価格化粧品に注力。中国人観光客に焦点を当て、日本でプレステージ化粧品を手にとってもらい、帰国後、中国で購入してもらう作戦が成功した。
中国事業と空港免税店の売り上げが伸びる
19年1~6月期の連結決算の売上高は前年同期比6%増の5646億円、営業利益は同3%減の689億円、純利益は同10%増の524億円だった。営業減益になったのは1~3月期に研究開発費や物流費などが膨らんだためだ。中国事業が業績を牽引した。全売上の41%を占める日本事業は売上高が微増の2319億円、営業利益は6%減の483億円と足踏み状態だった。
一方、中国事業は売上高が16%増の1077億円、営業利益は15%増の180億円となった。高価格帯のプレステージ化粧品の売上高が31%増の501億円と大きく伸びた。中国事業が全社に占める売上高の割合は19%。2本目の柱に育ってきた。プレステージ化粧品の売上高(501億円)は日本のそれ(775億円)に迫る勢いだ。
もうひとつ伸びているのは、各国の空港免税店のトラベルリテール事業。売上高は17%増の531億円、営業利益は8%増の120億円。19年12月期(通期)見通しは、売上高が18年同期比6%増の1兆1640億円。従来予想を80億円引き下げたのは、新しい会計ルールと為替の影響によるもので、それらを除くと実質40億円の上方修正となる。営業利益は11%増の1200億円の見込み。純利益は税金負担の減少などで35%増の830億円へと75億円上方修正した。
アリババ集団と提携し中国人向け化粧品を開発
好調な中国で攻勢をかける。4月、中国の通販大手、アリババ集団と業務提携を結んだ。資生堂が杭州市のアリババ本社の近隣に拠点を開き、連携して商品開発に当たる。アリババとの連携で専用拠点を設けるのは日本企業で初。商品開発の第1弾はシャンプー。ヘア・ボディーケアのブランド「アクエア」を9月からアリババの「天猫(ティーモール)」で独占販売した。頭皮や枝毛などの悩みに対応するヘアケア商品で、アリババの新製品開発センターが持つ7億人近くのビッグデータを活用した。19年内にベビー用スキンケアブランドも天猫で販売を始める予定だ。
18年11月11日(通称:独身の日)にアリババグループが開催した「11.11 グローバル ショッピング フェスティバル」で資生堂は「中国の消費者に選ばれる越境ECブランドランキング」で1位を獲得した。アリババ集団が資生堂と提携した理由が、ズバリ、これだ。
米新興スキンケア化粧品会社を買収
10月8日、欧米で若者に人気のある化粧品ブランド「ドランク・エレファント」を展開する米ドランク・エレファント(デラウェア州)を8億4500万ドル(907億円)で買収すると発表した。ドランク・エレファントは12年の創業。18年の連結売上高は7500万ドル(約80億円)。米国を中心に英国、オーストラリア、シンガポールなどでスキンケア商品を販売している。天然素材など肌に良い原料を用いた高品質のスキンケア商品のブランドを手に入れ、海外事業に弾みをつけたい考えだ。
米国事業は資生堂のアキレス腱だった。10年、米自然派化粧品会社ベアエッセンシャルを19億ドル(当時の円換算で約1800億円)で買収したが、これが大失敗。ずっと資生堂の業績の足を引っ張ってきた。17年12月期の米国事業(営業利益)は118億円の赤字、18年同期も148億円の赤字と赤字経営が続いた。ドランク社の買収で、米国事業で一発逆転を狙っている。
魚谷氏は、資生堂ブランドの再生に成功。24年までの続投が決まった。魚谷氏の任期が異例な長期に及ぶのは、「後継者が育っていないから」(資生堂の元役員)との指摘もある。魚谷氏は残る任期中に後継者を育て、経営をスムーズに引き継ぐことが課題となる。資生堂は16年に欧米や中国などに6つの地域本社を設置するなどグローバル化を加速。各地域本社は同業他社などからヘッドハンティングした現地人材を幹部に登用した。抜群の成績を挙げた幹部が“ポスト魚谷”の有力候補となる。
19年12月期の業績を下方修正
資生堂は11月7日に19年1~9月期の連結決算を発表した。19年12月期の連結純利益が前期比28~35%増の785億~830億円になる。従来予想(830億円)を上限に、最大で45億円の下振れを予想している。香港のデモや日韓関係の悪化、日本の天候不順などが業績への逆風になった。売上高予想は1兆1340億~1兆1390億円とした。250億~300億円の引き下げとなる。香港で50億~60億円、韓国で30億円下振れすると見込む。
米州事業は振るわず、112億円の営業赤字。前年同期から16億円赤字が拡大した。ドランク・エレファントの業績への寄与は20年12月期以降となる。
(文=編集部)