日本時間の先々週末(12月13日未明)、COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)は、新たな地球温暖化対策の枠組みとなる「パリ協定」を採択した。実効性の問題が残るとはいえ、パリ協定は全員参加型だ。キャメロン英首相が「史上最も前向きな世界的歩みの一つ」とフェイスブックに投稿したように高く評価されている。
確かに、温暖化ガスの2大排出大国である中国、米国が加盟せず、日欧など一部の先進国だけがペナルティ付きの排出削減義務を負わされていた“不平等条約”の京都議定書と比べれば、隔世の感がある。
この合意を受けて、菅義偉官房長官は14日の記者会見で、温暖化ガス削減は「安倍内閣の最重要課題のひとつ」と強調。2030年までに13年比で26%減らす日本政府目標に関し「経済成長を犠牲にせずに達成していきたい」と発言した。
ここで気がかりなのが、その達成のために安易な“便乗政策”が横行することだ。例えば、CO2の排出削減に有効との名目で続々と原発の運転期限が延長されて、福島第一原発事故以来のもうひとつの政府公約である「原発依存度の最大限の引き下げ」がないがしろにされつつある問題はその一例だ。
パリ協定は20年以降の地球温暖化対策の枠組みである。ポイントは、産業革命前との比較で気温の上昇を1.5℃以内とすることを目指し、途上国を含む196の条約加盟国・地域に温暖化ガスの削減目標の作成、国内対策の実施、履行状況の報告などを義務付けた点にある。実現を担保するため、各国に目標の5年ごとのレビュー義務を課す措置も講じた。先進国と途上国の最大の対立点の一つだった途上国に対する資金援助の問題では、先進国に拠出義務を課したほか、新興国にも自主的な対応を促し、妥協にこぎ着けた。
しかし、各国が義務を負うのは、削減そのものではなく、目標作りや履行状況の報告にすぎない。しかも、試算ではこれまでに各国が公約している削減目標がすべて実行されても、今世紀末までに2.7℃以上気温が上昇するという。先行きが危ぶまれる要因が残っていることは否定できない。
とはいえ、18年前の1997年に採択された京都議定書は、役立たずの不平等条約だった。温暖化ガスの排出で1位の中国(13年の排出比率28.0%)、4位のインド(同5.8%)、5位のロシア(同4.8%)といった新興国が最初から対象外。また、第2位の米国(同15.9%)も01年に離脱し、削減義務を免れており、温暖化対策としての効果が期待できなかったのだ。