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しかも、今後、人口減少が加速するとみられることを勘案した形跡がない。エコノミストのなかには「30年度にかけて電力消費量は労せずして減少する。省エネ努力を加えれば、激減してもおかしくない」との見方があることを、経産省は黙殺して、必要な原発の数を水膨れさせた。
加えて、以前にも本コラム(8月19日付「政府と電力会社が隠したい、電力供給の『余裕』」)で紹介したが、予想以上のハイペースで再生可能エネルギーの普及が進んでいることを官僚が目立たせまいとしている問題もある。
東日本大震災後、昨年まで夏の電力使用のピークのたびに供給不足から大規模停電が起きることが懸念されてきたが、今夏は状況が一変。原発が1基も稼働していなかった、つまり原発比率がゼロだったにもかかわらず、前年までと違い、電力会社の供給力に大きな余裕が生まれていたのである。温暖化ガスの排出削減は期せずして達成されており、無茶な再稼働や運転期間の延長は無用の長物になっている。
にもかかわらず、無用な再稼働や運転期間延長を続けることで、「可能な限り原発依存度を引き下げる」という安倍政権の公約は、完全に形骸化するだろう。
安易な原発政策のほかにも、官僚が目論むCOP21便乗政策として、再来年4月の消費増税に伴い、二重課税を引き起こさないために廃止すべき自動車税の代わりに、新たに温暖化ガスの排出量に着目した「環境性能課税」という新税を課す動きが表面化している。今後、機を見るに敏な官僚たちが似たような試みに出るケースは増えていくだろう。
だが、ここはCOP21が実現した歴史的な合意を、いい加減な便乗政策に悪用することは控えて、本当に意味のある施策に集中してほしいものである。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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