そんな香港ですが、現在は本国の経済大国・中華人民共和国との関係が経済を支えていることは確かです。97年に共産党主義・中国の一都市となったものの、2047年まで香港の資本主義システムを維持するとの約束になっています。それにもかかわらず、GDPが世界第2位に急成長した中国は、香港経済に依存している部分はありつつも、47年を待たずして香港を共産主義に取り込む動きが急激に進んできました。
しかしながら、23歳以上の香港人は、英国統治下の自由な時代に生まれ、それ以降に生まれた若者たちも、民主主義の中で自由に生きてきました。それが最近になって、中国本土の締め付けがきつくなったことにより、若者を中心とした大規模なデモや、大学立てこもりなどの市民・学生運動が起こり、警察が強硬に介入、出口が見えない状況になったわけです。
11月24日に香港の区議会選挙が開催され、体制に不満を持つ民主派が85%以上の議席を持つことになったとのニュースが世界中を駆け巡っています。前回は急成長した中国経済に後押しされて過半数を取っていた親中派が、今回は議席を10%程度にまで減らす大敗を喫したことも、香港にとっては大きな転換期になり得る事件だと思います。しかし、自由主義を謳歌してきたはずの香港の有力者や富裕層たちの多くは、現在の中国との関係を重要視する親中派ということもあり、なかなか複雑です。
現在の香港の人口は740万人ですが、英国海外市民は340万人に上ります。そのため、イギリス下院外交委員会のトム・トゥーゲンハット委員長が「返還前までに生まれた340万人の英国海外市民に対して、完全なイギリス国籍を与えればどうだろうか?」と発言したことが話題になっています。これは、中国の武装警察が香港のデモ鎮圧を念頭に訓練を行うなど緊張が高まっているなか、イギリスが香港人を支援していると示すことで中国を牽制する狙いもあるとみられています。
17年には世界14位となる900万人の外国人が訪れた人気都市であり、18年には日本を抜いて長寿世界一になった香港。魅力ある平穏な香港に早く戻ってほしいと願っています。