25年以上にわたり1000本を超すテレビCMを中心にマーケティング戦略立案に携わってきた鷹野義昭氏が、新たに年間2万本以上オンエアされるといわれるCMについて、狙いやポイントはどこにあるのかなど、プロの視点からわかりやすく解説する。
首都圏に住まわれている皆さんが地方へ行くと、「やたらパチンコ店のCMがテレビで流れている」と思ったことはありませんか。
「それは、地方ではパチンコ店が儲かっているからだ」と思う人も多いでしょう。確かにそれも一理ありますが、もっとややこしい理由があります。
「レジャー白書2015」によると、2014年のパチンコ人口は1150万人、パチンコホールの市場規模は24兆5040億円に上ります。
今回は、成人の約2割を占めるターゲット人口と、日本の国家予算の約3割に相当する市場の中核を支える「地方パチンコホール」の広告展開から、腑に落ちるテレビCMのマーケティング戦略を解説したいと思います。
「パチンコメーカーのCM」と「パチンコホールのCM」は似て非なり
「東日本大震災以降はあまり見られなくなったとはいえ、東京でもSANYO、サミー、ニューギン、平和などのCMが結構流れている」という意見もあるでしょう。
確かに震災直後、節電を名目にやり玉に挙げられたパチンコは、CMオンエアが自粛状態になりました。そして何より、「パチンコ機種のCM」を近頃見なくなったのは、業界が「企業イメージのCM」に限定することにした自主規制によるものです。
一見すると、同じパチンコのCMのように思えますが、地方で大量にオンエアされている一般的なパチンコ店の「ホールのCM」と、「メーカーのCM」は違うものなのです。では、なぜ大金をかけてまで、ホールではなくメーカーがCMをする必要があるのでしょうか。
ではわかりやすく、パチンコ台そのものの「パチンコ機種のCM」が可能だったころで考えてみましょう。
メーカー側は、お客様に自社がつくったパチンコ台で遊んでほしいという狙いもありますが、最終的にはホールにその機種を導入してほしいというのが目論見です。
家で「海物語」のCMを見て、歩いていたら店先の旗めくノボリが目に入り、ついパチンコ店に吸い寄せられ、海物語のパチンコ台に没頭したような経験のある人もいるのではないでしょうか。
つまり、海物語のホールでの稼働率が上がることで、ホールの経営者は定番機種としてバージョンが変わるごとに新台を導入することになります。そして、店にとっては人気機種の存在は有効な“客寄せ”材料となるのです。
このことは、ある意味、お店への集客CMとして「パチンコホール」の肩代わりの機能を果たしているといえます。