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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

7千円でも入手困難な日本酒を生んだ、中小酒造会社の「業界常識破り」…大幅コスト増を吸収

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

 このように当初は苦戦したものの、それほど時間がかからず販売は好調に推移し始めます。味の良さを認めてくれた消費者から指名買いされるようになったのです。また、「10%高い精米率」は極めて明確で、消費者に対する有効なキャッチコピーとなり、口コミでの広まりに大きく貢献しました。

 また、一般にプレミアム商品において重要になると考えられがちな包装に関して、関谷醸造においては極めてシンプルで、例えば瓶の色は異なるものの、形はなるべく同じものになっており、さらに化粧箱の形も統一されています。これによって、ひとつのラインで効率よく瓶詰めや梱包が行われます。こうした点にコストをかけないことは、良い日本酒造りに必要な原材料や製法により1.5倍にアップするコストを吸収し、適正な販売価格の実現に貢献しているわけです。

 良い商品をつくるために良い原料や製法を用いることは、比較的簡単に多くの企業が思いつくことでしょう。しかし、その結果として高い販売価格となるため、多くの企業が簡単にあきらめてしまうはずです。

 業界の慣例に挑戦するなど、大きな摩擦が生じることを承知のうえで、販売価格を顧客が許容できるレベルにまで抑え込もうとする企業は決して多くはなく、関谷醸造のケースからは差別化における企業トップの覚悟の重要性を学ぶことができます。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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