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垣田達哉「もうダマされない」

【コロナ】マスク不足の次に襲う「食料不足」…諸外国が自国優先で輸出制限なら日本は窮地

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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撮影=編集部

 筆者は、3月27日付本連載記事で「緊急事態宣言なら戦時下と同じ状況」と述べたが、7日の安倍首相による緊急事態宣言前後から、それに近い状況になってきた。4月5日(日)に、いつものスーパーに買い物に出かけた。その店「A」は首都圏でのチェーン店で、何十店舗もあるわけではないが、中規模スーパーである。

 どのスーパーもそうだが、日曜日なので開店と同時にそれなりに混んでいた。しかし、いつもよりお客は多く、開店早々なのに加工食品で品数が少ない商品が目立った。特に小麦粉やパスタ、お菓子などの小麦粉製品が非常に少なく、一人1点までと購入制限がもうけられた商品も多かった。

 もう一軒、近くのスーパー「B」にも足を運んだ。Aと比べるとレジ待ち客は圧倒的に少なかったが、この店も1週間前の日曜日はレジ前に大行列ができていた。商品棚を見ると、やはり小麦粉製品で売り切れ続出だった。バター売場では、大手メーカーの一般的な価格の商品が完売していた。A店にはそのバターが10個ほどあったので、戻ってみると完売していた。30分ほどで10個が売れたのだ。たまたま店員が近くにいたので「今度いつ入ってくるんですか?」と尋ねると「4月分がすべてなくなったので、次は5月です」と言われた。

 消費者は、すでに買い溜めモードに突入している。筆者は3月初旬、小売業向けウェブサイトで「トイレットペーパーなどの紙製品から、米、パン、納豆、缶詰などの食料品の買い占めが始まっている。この次には、冷蔵庫や冷凍庫があるので生鮮食品の買い占めが始まるかもしれない。その次には、生鮮食品を蓄えるための冷蔵庫や冷凍庫、日用品を備蓄するための倉庫なども品不足になるかもしれない」と述べたが、加工食品の買い占めの範囲はかなり広がっている。

 先日もテレビで、冷蔵庫の売上が伸びていると報じられていた。ある地方のテレビ局がスーパーに取材に行くと、「首都圏で品不足が起きているので、その影響でこちらの地方には商品があまり回ってこない」と店員が話していたという。首都圏だけでなく地方でも食料品の品不足は起きているようだ。自粛要請が強まれば強まるほど、品不足は加速していくだろう。

自給率が低い日本で、どこまで耐えられるだろう

「世界の多くの政府がウイルス拡散を遅らせるためロックダウン(都市封鎖)に踏み切ったが、これにより国際貿易と食料品のサプライチェーンに深刻な影響が出ている。多くの国で、ロックダウンの対象となった都市の住民がパニック買いに走り、スーパーマーケットの陳列棚が空になった。これは食料品のサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)さを示している。

 FAOの屈冬玉(Qu Dongyu)事務局長、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長、WTOのロベルト・アゼベド(Roberto Azevedo)事務局長は連名で共同声明を出し、『食料品の入手可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品不足が起きかねない』と述べた。」(4月2日付JIJI.COM配信記事)

 世界では穀物の輸出規制が始まっている。自国で食べる分を生産するのが手いっぱいで、輸出する分まで生産する余力がないということだ。幸いにも、日本の依存度が高い米国(牛肉、小麦、飼料等)、豪州(牛肉、小麦)、カナダ(小麦)、ブラジル(鶏肉)では、輸出規制はされていない。しかし、いずれの国も新型コロナウイルスでは大きな影響を受けている。いつ何時「日本に輸出することはできません」と言われかねない。

 4月1日付本連載記事でも述べたが、米(コメ)は国と民間在庫で国民の消費量の6.2カ月分、食料小麦は2.3カ月分、大豆は民間在庫で1カ月分しかない。東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の人口は、約3600万人だ。例えば、皆が同時にカップ麺を1人分買えば、一瞬で3600万個のカップ麺がなくなる。東京圏は世界にまれに見る巨大な胃袋なのだ。

 食品の買い占めが起きるたびに、行政やスーパーの店長らは「商品は毎日入ってきます。ご心配ありません」と言っていたが、今は「物流が間に合っていないが、在庫はたくさんある」という言い方に変わってきた。最近は、入ってくる数量が少ないので、「お一人様1点まで」という制限がある商品が目立つ。

 店頭から川上に遡って在庫があるという表現に徐々に変わってきている。「店頭在庫は少ないが、メーカーには在庫がある。生産もしている」とアピールしているが、消費が大量になれば、メーカー在庫も減る。メーカーが大量生産しようとすると、原材料の仕入れを増やさなければならない。

 自給率がほぼ100%の米は心配ないかもしれないが、小麦(自給率12%)や大豆(同6%)は、ほとんど輸入に頼っている。生鮮品の収穫量は買い占めに対応するために国内生産を増やそうとしても、簡単には増やせない。ましてや輸入となると、輸入量を増やすどころか、現状維持の量を確保できるかどうかも怪しくなってくる。

 農水省は8日、HPで小麦が輸入されるところを紹介し、輸入が滞っていないことをアピールしている。現状、輸入に問題は起きていないようだが、新型コロナウイルス問題が長引いた時、本当に食料確保に不安はないのだろうか。

海外では第一次産業にも大きな影響

 米国でも消費者の買い占め行動は起きている。経済活動を縮小しないためにも、輸出産業は重要視されるだろうが、いざとなれば、当然他国の食料より自国優先になる。輸出用の家畜の配合飼料生産も後回しになるだろう。ヨーロッパもフランスでは人手不足で農産物生産に影響が出てきたので、失業者に募集をかけている。予想以上の応募があったようだが、新型コロナウイルス問題が大量の失業者を生み、第一次産業にも大きな影響が出てきているということだ。

 日本でも緊急事態宣言で規制が強まり、都市封鎖のような状況になり、例えば「スーパーでは前後の人と約2mの間隔を空けて並び、順番に買い物をする」となると、東京圏で1000万人がスーパーに並んで、順番に買い物をするには何時間かかるだろう。マスクがなくても生きていけるが、食料がなくては生きてはいけない。マスクあるある、トイレットペーパーあるある詐欺は我慢できるが、食料あるある詐欺は許されない。

 日本の自給率は37%だ。幸い、米の自給率ほぼ100%なので安心だが、牛肉も小麦も大豆も、いったん輸入が途切れれば未曾有の食料不足に見舞われる。日本でも新型コロナウイルスの感染者が増え続け、いつ終息するか見通しが立っていない。長引けば長引くほど食糧危機は迫ってくる。今からでも遅くはない「自国民が食べるものは自国でつくる」と方針を転換すべきだ。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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