「ニンテンドー銀行」の異名を取る任天堂の16年3月末の手元流動性は、9093億円と潤沢だ。それでも米大リーグ球団シアトルマリナーズの運営会社の持ち分を売却して利益を捻出するのは、社運を賭ける新型ゲーム機「NX」の開発に向け万全を期すためだ。
スマートフォン(スマホ)端末の普及を背景に、ゲーム市場は世界的に拡大が続いている。だが、主役はスマホアプリを中心とするモバイルゲームだ。かつてゲームの王者だった家庭用ゲーム機は市場の縮小が続く。
任天堂はNXで起死回生を図る。スマホのゲームユーザーを取り込めるかどうかが復活のカギを握る。
ソフト体質の経営者の素晴らしい発想で、どこにもないユニークな商品を生み出すことで任天堂は成長してきた。山内氏の「任天堂に必要なのはソフト体質を持っている経営者」という発言の重みが、今、任天堂に重くのしかかっている。
任天堂が映画に参入
任天堂が映画事業に参入するため、世界の複数の制作会社と提携交渉を進めている。映画事業でキャラクタービジネスを強化するのと同時に、ゲーム人口を増加させるという一石二鳥を狙う。
数年後に「スーパーマリオブラザーズ」など、人気ゲームを題材にした3Dアニメが登場するかもしれない。
これまで任天堂はキャラクターを使う権利を製作会社に付与し、使用料を得てきたが、直接、映画製作に踏み出す考えだ。日本だけでなく米国など世界市場を意識しており、ワールドワイドでの映画の公開を目指す。
映画製作には、シアトルマリナーズの売却益の一部を充当する。映画事業は、関連会社のポケモンが「ポケットモンスター」シリーズの製作を手掛けたことがある。過去には「マリオ」を題材にした映画が製作されたこともあるが、任天堂はキャラクターの提供だけにとどめてきた。
映画事業への参入で任天堂の株価は小康状態となった。5月24日の終値は1万5785円。2月3日の年初来高値(1万8000円)と比較すると、それでもまだ1割以上安い。
(文=編集部)