三菱は厳格な会計処理をしたため赤字転落
伊藤忠に首位の座を明け渡した三菱は、4月1日付で小林健氏から垣内威彦氏に社長が交代した。「社長交代を機にできるだけ膿を出す」と予測されていたが、予想以上に減損処理された数字は大きかった。4260億円の減損を計上、このうち資源関連は3850億円だった。三菱は発足以来、初の連結最終赤字(1493億円の赤字)に転落した。
「三菱の基準で資源を減損処理していれば、住友や丸紅も赤字に転落したのではないか」と指摘するアナリストがいる。もし、「住友、丸紅、さらには三井の減損の計上が過小」だったとすると、三井、住友、丸紅の17年3月期の利益の数字は下振れする可能性が高い。
殊に、住友グループ内で「(16年3月期決算で)赤字になればトップの交代は必至」といわれていた住友は、2年連続の赤字を回避するために「損失の計上を抑えた」(商社担当の有力アナリスト)との見方が根強くある。そのため、住友の利益見通しの達成確率を30~40%と、かなり低く見積もった。
同様に丸紅は50%以下、三井も50%とした。三井社長の安永竜夫氏は「資源の権益について入れ替えるのではなく、優良なものがあれば補強していく」と資源への思い入れを残している。
一方、三菱の垣内氏は「3兆円の投融資残は増やさない。ポートフォリオは躊躇なく入れ替える」と厳しい姿勢を見せている。みずほ証券は6月3日付リポートで「(トップが)商社で初めて真の資本配分の適正化を指示した」と高く評価し、目標株価を2650円に引き上げた。ちなみに6月6日の終値は1916.5円となっている。
三菱商事の新社長に期待
三菱の新社長、垣内氏は面構えがいい。「日経ビジネス」(日経BP/5月30日号)の編集長インタビューで1ページまるまる使った顔写真が載っているが、実物はもっと精悍だ。久しぶりに面白い経営者が出てきた。「日経ビジネス」では、「逆境の中で社長に就任した」ことを問われ、「誤解されてもいけませんが、ワクワクしています。どうせ逃げられないし、仕事をするなら困難が大きいほど、男冥利に尽きますね」と答えている。
三菱のドラスティックな決算は、小林健会長(前社長)と話し合いながら垣内氏が進めたが、実際に辣腕を振るったのは増一行常務兼CFO(最高財務瀬金車)だ。社内で“カミソリ増”と呼ばれている。増氏が策定した中期経営計画が「出色のでき」(三菱の役員OB)と評判だ。