ワタミ、「全従業員に対する過重労働再発防止策」制定でブラック企業&経営危機脱出へ
この「うえだ」はたいそうな人気店で繁盛していますが、これは上田さんが上司から命令されて仕事を行っているのではなく、事業主である上田さんの情熱と根性で成り立っているビジネスです。もし企業が自社の従業員に対して上田さんのように働くことを要求したら、それは明らかに過重労働であって、その企業はブラック企業です。
しかしながら、個人が営む飲食店のなかには、上田さんのように明白に過重労働に該当するような仕事ぶりの人が少なくありません。彼らは自分の意思で、体を張って飲食店経営をしています。外食産業の企業は、そのような強力な競争相手と戦っています。これが、飲食店経営の現実です。
しかし、だからといって従業員に過重な労働を課して、使い捨てにするような雇用は許されません。この重大な課題に取り組む象徴的な企業が現在のワタミです。そのため、新しいスタートラインに立ったワタミの経営の成否は、大いに注目されるのです。
ワタミのセグメント情報から見えること
ワタミの事業は、「国内外食」「宅食」「介護」「海外外食」「環境」「農業」の6種類の事業からなります(「介護」は15年12月に売却)。その事業ごとの業績は、以下のとおりでした。
このなかで、質量ともにもっとも大きな比重を占めているのは「国外外食」であり、ワタミはその国内外食で15億3500万円もの赤字を産んでしまいました。当然のことながら、これを黒字化しないことにはワタミの再生はあり得ません。
過去数年間における国内外食の業績の推移
以下に掲げる表とグラフは、過去6年間におけるワタミの国内外食の四半期別利益データです。
このデータには、はっきりとした特徴があります。12年7~9月頃から、はっきりとした業績の低落傾向がみえます。そして、13年からは年間を通じて赤字経営を余儀なくされています。12年、ワタミは、有識者やジャーナリストなどで運営され一般の人々が投票する「ブラック企業大賞」の市民賞を受賞し、13年には大賞を受賞しています。つまり、ブラック企業としての評判とともに、会社経営が傾いてしまったことが一目瞭然です。