集団指導体制には、そもそも後継の経営者の層が薄いという背景がある。さらに、経営陣の派閥抗争、骨肉の争い、息子への盲目愛など、創業家による世襲の失敗も、集団指導体制に移行する要因だ。いずれにしろ、傑出した人材がいないからみんなで責任を分け合いましょうというのが、集団指導体制の中身だ。まさに、経営者の小粒化現象そのものといえる。
いや、それより何より、後継者選びのあり方が昨今の小粒化に拍車をかける最大の要因かもしれない。サラリーマン社長は、えてして有能な外部人材を遠ざけ、社内から自分より小粒の後継者を選ぶ。社長退任後も、自らの支配力と影響力を残すために、院政を敷くからである。だから、社長交代のたびに、日本企業のトップは無難でおもしろみのない人材で固められていく。小粒化の連鎖である。
プロの経営者は日本企業を救うのか
では、経営者の小粒化の解消策として、オーナー社長とサラリーマン社長の中間的存在ともいうべき、プロの経営者に期待することはできないだろうか。
ここ数年、日本の企業でもプロの経営者を起用する企業が増えてきた。草分けは、1999年に2兆円の有利子負債を抱えた日産自動車にトップとして送り込まれV字回復させた、カルロス・ゴーン氏である。
このほか、スナック菓子メーカーのカルビー会長の松本晃氏、資生堂社長の魚谷雅彦氏、武田薬品工業社長のクリストフ・ウェバー氏、サントリー社長の新浪剛史氏など、プロの経営者の活躍が目立つ。
なぜ、プロの経営者に注目が集まるのか。これまで述べてきたように、サラリーマン社長では、激変する経営環境のなかで果敢な攻めの経営ができないという危機感があるからだ。いわば、小粒化の回避と見ることができる。
堂々巡り的議論になるのを承知のうえであえて申せば、これまた、プロの経営者を起用すれば、うまくいくとは限らない。
たとえば、ベネッセホールディングスは2016年5月、原田泳幸会長兼社長の退任を発表した。大黒柱の「進研ゼミ」の会員減に歯止めがかからず、2期連続の最終赤字に陥ったことに対する経営責任をとっての退任だ。
原田氏といえば、アップルコンピュータ社長から日本マクドナルド社長に転身し、業績をV字回復させたことで知られる。その経営手腕を期待されて、ベネッセホールディングスのトップに招かれたが、功績を遺すことはできなかったわけだ。