ミキハウス、ゼロから世界トップブランドへの「無私の経営」…五輪選手を多数輩出の理由
片山 その後、ビジネスを立て直し、昨年はインバウンドが好調で、パートを含む全従業員に決算賞与、さらにベースアップをした。絶好調ですね。
木村 今は百貨店で新生児とかベビー用品の売り場を広げたりして、力を入れています。順調に伸びていますよ。最悪の苦しさを味わえば、あとはそれ以上の苦しみはありません。よくなるばっかりですからね。オリンピック選手だって、練習でさんざん苦しんで、試合は楽しんでほしいですよ。
片山 それにしても、売り上げが厳しい環境下でも、木村さんはスポーツ支援を続けられた。
木村 それは別だと思ってやってましたから。
片山 そうおっしゃいますが、バブル崩壊、リーマンショックなどの危機のたびに、大企業はスポーツ支援を打ち切ってきました。
木村 企業スポーツも変わってきています。今は、選手が練習場所やコーチを自分で探しますよ。
片山 「個」の力が強くないと、世界一になれない世界ですね。
木村 そうですね。企業が「このスポーツ」と決めて応援する時代ではなくなりつつあるんじゃないでしょうか。
「個」の力という意味では、オリンピックに出るような選手は、やっぱりちゃいますよ。ただ強いだけやない。ひとつのことをがんばり続けるというのは、何か思いや哲学を持っていなければできないことです。精神力というか、信念、執念ですよね。
社員の思いを支援する
片山 木村さんは以前、自転車で世界一周したいという社員を応援し、4年3カ月も有給休暇を与えて実現させました。米国でMBA(経営学修士号)を取りたいという社員は、社内から反対があったにもかかわらず送り出した。
木村 自転車世界一周した坂本達も、MBAの社員たちも、本気であれば会社が応援しますよというので、やっているわけですよ。例えば、5年間普通に働いた社員と、5年間で世界一周してきた社員と、どっちが貴重な人材か。世界一周の坂本は高校の英語の教科書にも載りましたよ。
MBA取得への派遣は、社内から「MBAを取って逃げられたらどうする」「契約書を交わしたほうがいい」といわれましたが、辞めたらしゃあない。会社に魅力がなかったら引き留められへんですよ。よそへ行って何倍もの年収をもらうか、うちを選ぶか。そこは企業の魅力次第であって、契約じゃない。
片山 ボストン大学でMBAを取得した社員には、米国で大きな仕事を任せているそうですね。