わずか2796人が年間5万回以上も利用
以上のデータより、現状の救急救命体制を理解した上で、将来のその危機について考えてみたい。救急車の出動回数増加や救急隊、救急隊員の増加は、高齢者の救急搬送増加が大きく影響している。そしてそれは、団塊の世代と呼ばれる47年~49年生まれが75歳以上となる25年にピークを迎えることになる。果たして、この時に救急救命体制は十分に機能しているだろうか。
ここに驚くべきデータがある。15年度救急業務のあり方に関する検討会の報告書から抜粋したものだが、14年に10回以上救急車を要請した人の実績だ。
※以下、年間の救急車要請回数:人数、延べ回数、利用者1人あたり回数
10-19回:1979人、24072回、12.2回
20-29回:340人、7916回、23.3回
30-39回:166人、5529回、33.3回
40-49回:80人、3502回、43.8回
50回以上:231人、11780回、51.0回
計:2796人、52799回、18.9回
1年間で10回から19回、救急車を呼んだ人が1979人おり、この人たちだけで年間2万4072回も救急車を呼んでいる。50回以上も救急車を呼んだ人が231人もおり、年間で平均51回も救急車を呼んでいる。つまり、ほぼ週に1回は救急車を呼んだ計算になる。なんと、全国でわずか2796人が年間5万2799回も救急車を呼んでいるという驚愕の事実だ。
これらの背景には、救急車を病院に行くためのタクシー代わりに利用している実態や、軽症にもかかわらず救急車を呼んでいるケースなどがある。だが、厄介なのは救急車の要請に厳しい条件を付けたりすると、救急車の出動要請をためらった挙句、手当てや病院等への搬送が間に合わなくなる可能性があることだ。
もちろん、行政も手をこまねいているだけではない。各消防本部では救急車の利用頻度の高い人や家族・親族などと面談を行い、救急車の要請があった場合には、家族などと協議を行う仕組みを取り入れている。加えて、地方公共団体の健康福祉担当部門と連携を取り、担当者の自宅訪問などにより、救急車の必要性を確認するなどの方法も取り入れられている。