「中国人客は絶対お断り」のラブホテルも
もっとも、これは一般ホテルに転業して成功した、数少ないケースのひとつにすぎない。
この「ホテルWILL浦和」がうまくいったのは、「高速道路からのアクセスの良さや、朝食つきで1人1泊5000円という格安の料金設定、団体客が宿泊可能な部屋数、大型バスを停められる駐車スペースなどがあったため」と平田氏。すべてのラブホテルがこうした好条件を有しているわけではなく、「改装すれば利用客が増える」とは限らないのだ。
「全国のラブホテルの90%以上が、地方や田舎にあります。ホテルのある場所が交通アクセスの中継地だったり、羽田空港や成田空港に近かったり、観光地だったりする場合は改装して成功する可能性もありますが、何もない場所に一般ホテルを建てたところで、観光客はなかなか来ません」(同)
仮に立地に恵まれていても、中国の旅行会社と提携して団体客を呼び込み、中国語で接客できるスタッフを揃えることは難しい。そもそも、一般ホテルに改装して多くの中国人旅行者を受け入れれば、マナーや習慣の違いなど、さまざまな問題も出てくる。
「私が知っているラブホテルには、『中国人客は絶対お断り』というところもあります。中国人旅行者は部屋を汚す上、大騒ぎしてほかの客の迷惑になり、料金トラブルやキャンセルが生じることも珍しくありません。こうしたトラブルや、それに伴うコストがかかるなら、『マナーのいい客だけを宿泊させたい』と考えるホテル事業者も多いのです」(同)
現在の日本のホテル不足は、ラブホテルを一般ホテルに転業させるだけで解決するほど単純な問題ではないのである。政府系金融機関にラブホテルへ融資させることで一般ホテルへの改装を進め、訪日外国人旅行者を倍増させるという政府の計画は、失敗に終わる気配が濃厚といえそうだ。
(文=岡田光雄/清談社)