益子氏は「法令には(走行抵抗値をとるため、テストする)回数の規定はない」としており、法令違反ではないとの認識を示した。三菱自と資本提携の締結で合意している日産自動車から三菱自の開発部門トップに派遣された山下光彦副社長も、「データ取得のためのテストを何回やるかの明確な規定はない」と説明する。
これに対して国交省は、明確に測定回数を定めているわけではないとしても、三菱自が良好な結果が出るまで測定を繰り返したことが「法令の趣旨に反し、不正かつ極めて不適切」と、やや強引とも取れる主張を展開。
三菱自を批判する後ろ暗さを隠すように国交省は9月2日、東京都港区にある三菱自本社と開発部門のある同社の名古屋製作所(愛知県岡崎市)へ立ち入り検査に入り、益子氏や開発部門トップなどから再測定の経緯について聴取。そして、立ち入り検査の結果、「三菱自が再測定結果をかさ上げし、カタログ燃費に近付けようとした意図が疑われる。燃費不正問題が明らかになった後の再測定で、こうした行為は常軌を逸する事態といわざるを得ない」と強く批判した。
9月15日には益子氏を呼んで「現場での法令遵守意識の欠如と、経営陣のチェックが欠如している」として、厳重注意するとともに再発防止策の見直しを指示した。三菱自は、販売停止している8車種について燃費データの修正を申請、当初9月中旬にも販売再開できることを想定していたが、再発防止策の見直しを国交省に報告した後に遅れる見通しとなった。
カタログ燃費問題
三菱自としては長年にわたって不正に手を染めてきた手前、国交省の理不尽とも思える批判に反論することもできないのが現状だ。
ただ、今回の国交省の指摘については業界の一部から、「カタログ燃費を良くするため、法令に沿ったやり方で走行抵抗データの測定を繰り返すのは当然だし、測定は平均値とすることだけで、測定する回数が法令に定められていないのも事実」と、三菱自を擁護する声もある。そもそも現在のカタログ燃費が実際の燃費と大きく乖離しているのは周知の事実で、「それが数%違うだけで、今さら何が問題なのか」との意見もある。
国交省が定めている現在の燃費測定方法では、エアコンをオフにして測定するなど、実際の走行方法とまったく異なることから「参考にもならない」と感じている一般ユーザがほとんど。