体に悪いケーキ等を「たくさん」食べてしまう理由…人々をスイーツに走らせる「正体」
本連載の前回記事(2016年8月5日掲載)で取り上げた「快楽的消費」について、今回も引き続き書きたいと思います。快楽的消費は、喜びを感じたり楽しんだりすることを目的した感情的な消費です【註1】。趣味性や嗜好性が強く、なくてはならないものではないので「欲しいけれども我慢する」のように、消費への欲求とためらいや抑制が同時に発生しやすいという特徴があります。
なぜ消費が躊躇されるのかというと、お金の無駄遣い、体によくないといった懸念があり、消費を正当化するのが難しいからです。たとえば、典型的な快楽的消費であるケーキやアイスクリームなどのスイーツでは、食べたいと思っていても肥満や病気への不安から我慢することが多々ありますが、これは不安が消費欲求を上回り、消費を正当化できないために生じます。
正当化できないまま消費した場合、罪悪感や悔いが残り自己統制感も下がりますので、あまり気持ちのいいものではありません。消費者はそれを考えて消費を控えようとするのです。前回の記事ではこのような場合、「努力した自分へのご褒美」や「ほかに選択肢がない」などの理由があると正当化でき、選びやすくなることを書きました。しかし、こうした理由がいつもあるとは限りません。
そこで今回は、正当化できる理由がなくても消費者に快楽的消費を楽しんでもらえる方法について、消費者行動研究に基づいて考えてみたいと思います。快楽的消費にはいろいろありますが、今回はスイーツに限定した話になります。
「おもしろ可愛さ」と快楽的消費のつながり
まず、ネンコブとスコットが行った「可愛さ(cuteness)」の実験を紹介したいと思います【註2】。この可愛さは、人間や動物の赤ちゃんを見たときに感じる「幼い可愛さ(kindchenschema cuteness)」とは違い、風変わりで滑稽なものに感じる「おもしろ可愛さ(whimsically cuteness)」です。