16年3月期の売上高は549億円で、営業利益は30億円。従来の地図帳の販売は17%で、残りはほぼデジタル地図が占める。住宅地図の出版やカーナビ事業は漸減傾向にあるが、地理情報システムの販売が好調で増収増益を達成した。中長期経営計画で20年3月期の連結売上高700億円を目標に掲げる。自動運転用の地図で計画の達成を目指す。
オールジャパンで挑む自動運転地図
6月、三菱電機、ゼンリンなど6社は自動車メーカー9社とともに自動運転向けの高精度地図の事業化を目指す新会社、ダイナミックマップ基盤企画を設立した。
資本金は3億円で、出資比率は三菱電機18%、ゼンリン17%、パスコ17%、アイサンテクノロジー6%、インクリメント・ピー6%、トヨタマップマスター6%。自動車メーカーは、いすゞ自動車、スズキ、トヨタ自動車、日産自動車、日野自動車、富士重工業、本田技研工業、マツダ、三菱自動車工業がそれぞれ3.3%。社長は三菱電機が中島務氏を送り込んだ。
自動運転時代に欠かせない新種の地図をつくる。高精度なデジタル地図を目指しており、そうなれば高速道路と真下にある一般道の違いを認識できる。正確な運転には坂道の勾配やカーブの状況などの情報が欠かせない。これに信号情報を加味すれば交通状況を先読みすることが可能となり、急停車や急発進のリスクを防げる。
ゼンリンは15年9月、三菱電機など6社と共同で内閣府が進める「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)・自動走行システム」の高精度地図の調査・検討業務を受託し、検証を進めてきた。6社に自動車メーカー9社が加わり、「オールジャパン」体制で3D地図の事業化を目指す新会社を設立。17年度をめどに自動車メーカーと共同で、データの仕様をどうするかなどの標準化を進める。
ゼンリンがメンバーに加わったのは、カーナビ用地図の作製で培ったノウハウを持っているからだ。得意の人海戦術で玄関までの情報を集め、ドアtoドアのサービスを可能にする地図のデータベースを構築した。17年の秋には、人口20万以上の都市で玄関まで案内できるナビが登場する。
この機能は、自動運転が実用化された時に威力を発揮する。カーナビで蓄積したルート案内のノウハウも生きてくる。
ゼンリンは高精度の3D地図を自動車メーカーに提供して収益の柱に据えるビジネスモデルを描く。株式市場がゼンリンを「自動運転銘柄」と見なしている理由がここにある。