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舘内端「クルマの危機と未来」

トヨタ新型プリウスPHV、数多くの誤解の根源…深刻な「充電待ち問題」

文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表

 たとえば日産自動車のリーフの旧型には24kWhの電池が搭載されている。50kWの充電器で最高出力で充電すると30分で満充電できる計算だが、実際はそうではない。電池や施設の都合で、急速充電器は常に最高出力で動いているわけではないからだ。

 急速充電をすると電池の温度が急速に上昇する。一方、電池は走行直後には温度が高い。高速道路のように高速で走った後はとくに温度が高くなる。こうした高温状態で急速充電すると、電池の寿命が短くなりやすい。そこで、それぞれの電池の特性とそのときの状態に合わせて、急速充電器の出力を調整する。これは充電時間を調整するということだ。

 電池の温度が上昇するのは、電池そのものの電気抵抗(内部抵抗)による。近い将来に実用化が期待される全固体式リチウムイオン電池は、内部抵抗が少ないので温度上昇も少なく、充電のスピードも速くできる。

 そうした電池の進歩に合わせて、たとえば急速充電器の最高出力を150kWにすれば、充電時間は現在の3分の1 以下になる。

 そうなれば、プリウスPHVでは空の状態からで3分30秒、三菱自動車工業のアウトランダーPHEVで4分42秒、あるいは米テスラモーターズのモデルSでは30分で、500km走行分の電気を充電できる。充電希望者同士のトラブルも少なくなり、譲り合いの心という美徳も不要というわけだ。

 こうして技術の進歩は生活を便利にはするのだが、生活から潤いをなくしもする。寂しい限りである。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)

※画像はトヨタの4代目プリウス(「Wikipedia」より)

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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