“格差社会”の縮図
しかし、放課後児童クラブには大きな問題が横たわっている。それは、運営時間の問題だ。18時30分以降も運営しているクラブは増加してはいるが、保育所と比較するとまだ少なく、特に19時1分以降が少ない。
この背景にはクラブ職員の処遇などの問題がある。放課後児童クラブの設置・運営主体は、公立公営と公立民営のクラブが全クラブ数の約82%を占めている。全国の放課後児童クラブの支援員等は総数11万3315人。このうち常勤職員数は3万405人(26.8%)で、7割以上が非常勤という状態だ。
加えて、職員のうち勤続5年未満が46.2%となっており、平均年収も127.4万円(150万円未満が全体の56.3%)という調査結果もある。常勤職員の増員と所得の引き上げは急務だ。安倍政権は保育士と介護人材の増員と所得水準の引き上げに対しては対策を打ち出したが、放課後児童クラブに関しては“蚊帳の外”の状態だ。
全国学童保育連絡協議会の12年調査によると、放課後児童クラブの月額利用料金は平均5535円。これに対して、同様の業務を行う民間のクラブでは月額数万円という高額の会費を徴収している。料金に比例して、かなり夜の遅い時間まで運営しているケースもある。
こうしてみると、詰まるところ、小学生を預けるのも実体的には、高額所得者であれば不自由がないという“格差社会”の縮図がある。本来なら、放課後児童クラブのような機能は、庶民にこそ有益であるべきだろうが、実態は違っている。
政府は、6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」で19年度末に122万人を目標としている放課後児童クラブの整備を18年度末に前倒しして行う方針を打ち出しているが、それでも遅すぎる。安倍政権は、今のところ放課後児童クラブの問題に対して、何ら有効な手段を打ち出せていないのが実態だ。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)