第2に、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)での拡散によって販売数が左右されるケースが多いため、販売予測がより難しくなっているという事情があります。たとえば、プライドポテトは、テレビCMで歌う女子高校生の歌がうますぎるとして動画が拡散されました。そのCMソングで「100パーセント日本産のいも」と連呼していることで大きなインパクトがあります。また、オシャレなパッケージや箸で食べることを推奨するなど、消費者への訴求内容も斬新でした。
フライドポテトと湖池屋のプライドをかけたネーミングなど、SNS向けともいえる「ネタ」も満載な商品となりました。発売後もインターネットニュースなどで「品薄」と伝えられ、それがSNSで拡散して、完全に“欠品スパイラル”に入りました。
品薄と聞くと「絶対手に入れたい」という思いが掻き立てられ、普段はお菓子を食べない人にまで購買層が広がり、品薄感が加速します。今回も短期間に相次いで2品が販売中止となり、残る「秘伝濃厚のり塩」味も欠品になってしまう可能性があります。
第3に、ここ数年、コンビニエンスストアのお菓子棚がPB(プライベートブランド)商品だらけになり、お客がNB(ナショナルブランド) の新商品を欲しているという事情があります。
大量陳列で販売促進するNBの新商品が少なくなっているなか、プライドポテトは大手コンビニにおいて、シーズンエンド(入り口付近のレジと対面にある棚)や、お菓子棚の最上段をまるまる使って大々的に品揃えする店舗が多く見られました。
コンビニは全国に約5万5000店あるため、全店舗一斉に大量陳列販売され、それが販売好調となれば、どんなに大量生産可能な設備を持っていても欠品しないメーカーはないと思われます。
湖池屋は、プライドポテトを6日からコンビニで先行販売、11日からテレビCMを流し、13日からスーパーなどでも販売開始という販売戦略を組みましたが、あまりのヒットから、一番人気の「和牛」味は、一部スーパーを除いて展開できなかったようです。
「品薄商法」の可能性は?
――生産量が少なくても売り続けるという選択肢はとれないのでしょうか
渡辺 メーカーとしては、特定の小売だけを贔屓して供給を続けると、供給されていない小売から反発を受け、今後の取引に大きなマイナス影響を与えるため、限定供給をするという方法をとれません。
特に、お菓子の市場において最重要小売業態である大手コンビニでは、チェーンごとに差をつけることはタブーです。コンビニ側は全店舗へ同様に供給することを求めますが、セブン-イレブンが約1万9000店、ファミリーマート系列が約1万8000店と相当の店舗数のため、各チェーンの全店舗に大量供給は不可能です。しかし、1社だけ特別対応はできません。つまり、供給数の問題と大手コンビニとの向き合いから、仮に若干の在庫があったとしても、メーカーとしては一斉に欠品対応を取らざるを得ないのです。