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高橋篤史「経済禁忌録」

たかのビューティやミュゼなどを次々買収する「破天荒企業」の正体

文=高橋篤史/ジャーナリスト

 また、こんなことも行っていた。ゴルフ場の売り手側に立っていた仲介役に頼まれ、ユキコーポレーションが仲介役の会社に送金した約1億7600万円をいったんエイチエムワンに還流させ、それを現金で引き出してそのまま仲介役に返していたのである。それについて沼田氏は「資金の浄化をしてほしいっていうこと」と法廷で事情を明かしている。つまりは脱税目的のマネーロンダリングだ。沼田氏が受け取った手数料は処理額の7%だったという。

 無軌道ぶりは呆れるばかりだが、前出の熊谷氏が韓国企業の幹部に宛てたメールなどによると、買収の対抗馬だったPGMホールディングスの社長の自宅に妨害のため街宣車を回す計画まであったという。熊谷氏は買収交渉が佳境を迎えようとしていた08年8月に韓国企業を突如退社しているが、これは意気投合した岡田氏とともに旧ライブドアグループの1社だったメディアイノベーション(旧ライブドアマーケティング)の買収に共同であたるためだった。同年11月の買収後、メディアイノベーションには沼田氏も監査役として参集している。

大物仕手筋の存在

 さらにこの後にこんな話もある。メディアイノベーションの買収で受け皿となった「アミーズマネジメント」という会社があった。11年12月、同社の証券口座は、ある金融ブローカーによって大量のゲオホールディングス株を移管する先として指定された。移管された株は直前までゲオの会長を務めていた沢田喜代則氏が借金の担保として金融ブローカーに差し入れていたもので、アミーズマネジメントの口座に移管された株はその後、沢田氏に無断で売却されてしまった。

 沢田氏は借金を返済して担保株を取り戻そうとしたが、後の祭りである。姿をくらました金融ブローカーはパクリ屋の常習者として有名な人物だった。融資の見返りとして割安な掛け目で入手した担保株を、無断で売り払ってサヤを抜くのがパクリ屋の手口である(ゲオ株問題の詳細については本連載の2015年5月28日付記事を参照されたい)。

 このパクリ屋常習者と大物仕手筋がタッグを組んで12年春頃から手掛けていたのが、冒頭に出たシスウェーブホールディングスだった。その大物仕手筋は、大盛工業株をめぐる風説の流布事件で逃亡の末、07年に逮捕された人物として知られている(その後、2年6月の実刑判決が確定)。その年の9月にシスウェーブがリアルビジョン(現RVH)の株をソリトンシステムズから大量に譲り受けたのは先述した通りだ。

 それと同時期、岡田氏は大物仕手筋らが関係する会社とシスウェーブ株について譲渡担保契約を結んでいる。さらに14年春にシスウェーブがリアルビジョン株を都内のコンサルティング会社に譲渡しようと画策しトラブルとなった一件でも、岡田氏が代表取締役を務める会社が噛んでいた。関係がますます深まっていった同年6月、岡田氏と長く共同歩調をとってきた沼田氏がリアルビジョンの社長に収まったというわけである。

畑違いの大型買収へ

 その後、RVHは畑違いの大型買収に突っ込んでいくのだが、じつは買収先はいわく付きの会社ばかりだ。

 最初に買収したDSCは過払い金返還請求を専業とする弁護士事務所を取引先とする広告代理店として、当時知る人ぞ知る急成長企業だった。東証マザーズ上場のフルスピードと資本提携していた時期もある。が、表向きの好業績とは裏腹に資金不足に陥っていたのが実情で、結果、手を染めたのが脱税だった。RVHによる買収から約1年後、創業者や架空経費の計上で協力先だった関係者らが国税当局によって刑事告発されている。

 ミュゼプラチナムのジンコーポレーションも経営は杜撰だった。派手な広告戦略や大量出店で高い知名度を誇っていたが、資金繰りは火の車。顧客から受け取っていた前払い金は先行投資で底をつき、一方で今後施術の必要がある未消化役務債務は簿外で500億円超に膨らんでいた。法的整理が取られなかったのはあまりに経営が乱脈を極めていたため、旧経営陣が裁判所の介入を恐れたからだともいわれている。

 今回買収した不二ビューティもいわく付きだ。3年前に残業代不払いなどで従業員から複数の裁判を起こされたブラック企業ぶりが比較的知られているが、じつは創業者の髙野友梨氏は過去、株の世界に首を突っ込んでいた時期がある。

 06年、髙野氏の資産管理会社で不二ビューティの全株を持つG.Pホールディングは、「紀尾井町T2OM再生事業投資事業組合」など4ファンドに計17億5000万円を貸し付けている。件のファンドは財務省の大物OB、田谷廣明氏が関係する先で、東証マザーズの第1号銘柄で当時はハコ企業と化していたニューディールの第三者割当増資を引き受けるなどしていた。G.Pホールディングの貸付金はその後、大半が焦げ付く結果となった。

トリッキーな方式

 さて、これら相次ぐ買収で大幅な増収増益を続けているRVHだが、それを額面通り受け取っていいものなのか――。というのも、好業績はある種、会計上のトリックに支えられたものだからだ。

 増収増益の大半はミュゼプラチナム事業の収益によるもの。しかし、そのほとんどはキャッシュフローを伴ったものではない。RVHはミュゼ事業の譲り受けにあたり、極めてトリッキーな方式をとっている。旧会社に支払う事業譲り受け対価を、新会社(子会社)による未消化役務債務の肩代わりで充当しているのである。その肩代わり分が売り上げと利益を大きく押し上げているだけなのだ。

 そのため今期に40億円もの経常利益を上げ、昨年12月末時点で87億円の自己資本があるとしているものの、直近の保有現預金はたったの6億6100万円にとどまるのが実態だ。それにもかかわらずぶち上げたのが今回の不二ビューティの買収なのだが、これも随分とトリッキーなスキームだった。

 RVHは2月1日付で不二ビューティ株の67.7%を54億円で譲り受け、残り32.3%を株式交換で2月22日に取得するとしていた。が、打ち出の小槌である株式交換はともかく、54億円もの大金がRVHにあるはずもない。そこでどうしたのか。決済時期を未定とした上でG.Pホールディングから先に不二ビューティ株を譲り受け、完全子会社化した後にもともと不二ビューティが保有していた54億円分の不動産をG.Pホールディングに引き渡すことで代物弁済としたのである。直近で不二ビューティの純資産は1億円あまりしかないから、実態としては大幅な債務超過会社を買収した構図だ。

 果たしてこんな破天荒な経営がいつまでも続くものなのか。相変わらず株主の変転も目まぐるしい。RVHについては、より注意深く見守っていく必要がありそうだ。
(文=高橋篤史/ジャーナリスト)

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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