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西武HDへTOBサーベラスの迷走…西武からの質問に明確回答避け、非合理行動続ける理由

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 だが、赤字路線の廃止にしろ球団売却にしろ、まして実現性について何ひとつ検証されていない高輪品川地区の再開発にしろ、いずれも思いつきレベルのものだ。こんなものを中期計画に盛り込めば、経営者の分別を疑われる。まして、市場が評価をするわけがない。

 日本では赤字路線の廃止がどれだけ困難なことか、運輸セクターのアナリストなら誰でも知っている。鉄道事業法の規定上では、鉄道の事業譲渡には国土交通大臣の許可が要るが、廃止は届出だけで可能だ。だが、国交大臣が地元に意見を聞くことができる、という条文の効果で、事実上国交大臣の許可事項になっていると言っていい。廃止が認められるのは、経営会社自身が倒産寸前の場合などに限られる。JR東日本が、地方の過疎地の赤字路線を何年かかっても廃止にできないのはこのためだ。新宿線と池袋線というドル箱路線を持っている西武HDに、路線廃止の許可が下りるはずなどないのだ。

 球団売却が盛り込まれているのに、西武ドームの売却や狭山線の廃止が盛り込まれていないあたりも、実に“思いつき”的だ。プロ野球興行は、球場との一体経営が収益改善の要であることは、過去5年間のパリーグ各球団の劇的な経営改善で立証済み。球団だけ売りに出して買う企業はまずない。DeNAがベイスターズ球団を単体で買ったのは、球場を所有する第三セクターからかなりの協力を約束されたからだ。ライオンズ球団を売りに出すなら西武ドームとセットだ。バラで買う買い手がいたとしても、フランチャイズが所沢でなくなれば西武ドームは不動産としての価値を失い、球場への観客輸送路線である狭山線はたちどころに存在価値を失うのに、サーベラスが「Redundant」つまり「不要」な路線と主張した5路線に狭山線はなぜか入っていない。

●さえないサーベラスの言動と、西武HDの甘さ

 徹底した強硬姿勢で投資先を服従させようとしているとしか思えないサーベラスの戦略が、日本社会から好感を持たれないことは間違いない。ただ、西武HD経営陣に、サーベラスを良くも悪くも“丸め込む”度量がなかったともいえる。

 サーベラスの投資額は、当初の1000億円ベースで計算すると1株当たり900円くらいになる。今回4%の買い増しに成功すれば、総投資額は約1200億円に増え、1株当たりの単価は50~60円ほど上がる。
 
 西武HD株の3割も保有するサーベラスが、上場時点で全株を売りに出すことを東証が許すわけはないのだが、とりあえず仮定の話として全株を売りに出せるとしても、一株1200円では7年間の運用成績は年利ベースで3~4%にしかならない。1500円でも8%、1700円でようやく10%を超える。年利2割以上にしようと思えば2500円だ。

 西武HD経営陣は、サーベラスが投資原資をエクイティでどのくらい、ローンでどのくらい調達していて、ローンの金利はどのくらい、弁済期限が何年なのか、エクイティなら投資家に約束している利回りがどのくらいなのかといった情報を当然把握しているべき立場にある。そして、そういった情報を総合して、サーベラスが受け入れ可能なエグジットのシナリオを想定していなければおかしい。

 後藤社長が言う「株価は市場が決めるものであって、株主が決めるものではない」、というのは確かに正論中の正論だが、サーベラスにごねられれば、まず再上場は実現しない。

BusinessJournal編集部

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