人口が増える転入超過は東京、千葉、埼玉など大都市圏の7都府県のみ。人口減少となる転出超過は47都道府県中、実に40道府県に達する。転出超過数の多い自治体は
1.北海道 6874人
2.熊本県 6791人
3.兵庫県 6760人
4.静岡県 6390人
5.青森県 6323人
「北海道は前年に比べ転入者数が増加したものの、転出者数の多さがその効果を打ち消してしまいました。JR北海道の経営危機問題や、新千歳空港を軸とした7空港民営化構想が浮上していますが、人口減に歯止めがかからなければ道経済を取り巻く環境は一段と厳しくなるでしょう。熊本は昨年4月の大地震の影響が考えられます。東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)への転出超過が前年比で433人増となっています」(地方問題を取材するジャーナリスト)
3大都市圏の内情を探ると、東京圏は圏外のすべての道府県との関係で、11万7868人の転入超過となっている。転入超過の絶対数は5年ぶりの減少となったが、全国各地から東京圏へ人口が移動している状況に変わりはない。
名古屋圏(愛知、岐阜、三重)をみると、全体では2363人の転出超過だが、愛知は6265人の転入超過で、そのうち名古屋市が5950人を占めている。岐阜は5031人、三重は3597人の転出超過となっており、名古屋へ集中していることがわかる。大阪圏(大阪、兵庫、京都、奈良)は9335人の転出増だが、再開発や観光人気で復権が期待される大阪府は1794人、大阪市は9474人の転入超過となっており、復権を裏付ける数字といえる。
全国的にみると、東京圏を中心とした大都市圏への人口流入が止まらず一極集中に歯止めがかからない。地方創生とは逆の動きが続いているのだ。
全国の1719市町村の75%が人口減
全国1719市町村別にみると、転入超過(ゼロを含む)は424で全体の24.7%、転出超過が1295で75.3%となっており、4分の3の市町村で人口が減っていることになる。転出超過数の上位20は次の通りだ。
1.北九州市
2.長崎市
3.熊本市
4.東大阪市
5.青森市
6.益城町(熊本県)
7.寝屋川市(大阪府)
8.横須賀市(神奈川県)
9.日立市(茨城県)
10.堺市(大阪府)
11.那覇市
12.下関市
13.函館市
14.佐世保市(長崎県)
15.釧路市
16.宮崎市
17.高知市
18.豊橋市(愛知県)
19.姫路市
20.八戸市(青森県)
九州・沖縄が7市あって、しかも県庁所在地が含まれている。函館、釧路といった北海道の中核都市の衰退も気になるところだ。新潟県(転出超過6189人)は、30市町村すべての自治体で15歳から64歳の区分が転出超過となっている。労働人口の流出が止まらないのだ。
これはあくまでも統計でみた人口の動きだが、マンパワーは街づくり、再生の源である。人材なくして発展はない。全国の4分の3の自治体が転出超過=人口減という寒々しい状況をみる限り、日本の前途は多難。
小手先の地方創生プランでは現実は変わらない。首都機能の本格移転、大学をはじめとする教育機関の地方移転、地方における知識集約型産業の育成、農水産業の高度産業化など、大胆で具体的な政策を講じない限り、地方自治体の自助努力だけでは地方の衰退を防ぐことはできない。地方創生を根本から考え直すべきだろう。
(文=編集部)