彼の最大の功績は、ローソンを支える加盟店のオーナーの信頼を取り戻したことだ。14年5月の株主総会では、株主として出席していた加盟店のオーナーから“新浪コール”が巻き起こり、急遽、新浪が壇上に登る一幕があった。新浪氏は加盟店のオーナーからの万雷の拍手に送られ、社長を辞任した。これは流通業の経営者として何よりの勲章といえる。
その新浪氏が後継者に選んだのが、玉塚氏だった。玉塚氏は、ユニクロを運営するファーストリテイリングの社長を務めたが、結局、柳井正会長兼社長のお眼鏡にかなわず社長を更迭され、自分で立ち上げた投資会社を経て、ローソン入りを果たした。そして14年5月、ローソンの社長に就いた。
玉塚氏が社長時代に、ローソンはコンビニ2位の座から転落した。16年9月1日、3位だったファミリーマートが、サークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスと経営統合し、店舗数や国内売上高でローソンを抜いて第2位に躍進したからだ。3位に転落したローソンを再浮上させるために三菱商事が打った策が、ローソンを子会社にすることだった。
玉塚氏、辞任は不可避な状況だった?
ローソン子会社化に向けて、重要な伏線があった。ローソンは16年3月、竹増氏が6月1日付で社長兼COOに昇格し、玉塚社長が会長兼CEOに就く人事を発表した。
今では三菱商事の新戦略「事業投資から事業経営へ」のシフトと連動した人事だったことが、はっきりとわかる。ローソンを直接経営するとの意思の表れだ。
ローソンの首脳人事も三菱商事が決める。玉塚氏に代わって竹増氏が社長に就任したのは、その具体例だった。
竹増氏は14年に三菱商事からローソンに副社長として派遣された。三菱商事の畜産部門出身で、16年4月に三菱商事社長に就任した垣内氏とは、畜産部門で13年間、上司・部下の関係にあった。ローソンに派遣される前の4年間は、三菱商事の前社長、小林健・現会長の業務秘書として仕え、「一緒によくカラオケにも行っていた」(別の三菱商事の元役員)ほどの関係だった。
竹増氏の使命は、子会社ローソンの企業価値を高めて、親会社の三菱商事に大きなリターンをもたらすことだ。持分法適用会社から子会社になったローソンの成長の道筋をどうやってつけていくかである。
昨年9月、当サイトで、「玉塚氏はCEOの職位を1年以内に竹増氏に譲ることになると見られている。玉塚氏が退任した後は、会長のポストを空席にするとの見方もある。そうすれば、ローソンの経営の風通しは一気に良くなる」と予測したが、これがズバリ的中したことになる。
(文=編集部)