いまだに「学生が就職したい企業ランキング」では上位に顔を並べるメガバンクが、大きな転換点を迎えている。低金利環境下で国内に明るい兆しは見えず、頼みの海外も不透明感が漂い、規模の拡大は難しいのが現状だ。もともとが高コスト体質だけに、自然と合理化が大きなテーマに浮上。「禁断の店舗閉鎖」も現実味を帯びてきている。
地方の零細支店の維持はもはや不可能
全国銀行協会によると、国内の本支店数は2015年3月末で約1万2000店。3メガバンク誕生前の01年3月末から13%も減っている。現在都心部でもメガバンクの店舗業務の決済の半分は、ネットでの代替が可能だという。人口減少で産業も先細る地方の支店を維持する気などさらさらない、というのが各行の本音だ。
特に支店再編に前のめりなのが、みずほフィナンシャルグループ(FG)。佐藤康博社長は「銀行、信託、証券機能を一体化した店舗を核として、周辺に地域のニーズや特性に合った小規模店を展開する」と述べている。
要は、地域ごとに母店となる拠点をひとつ設けて、周辺の店舗はスリム化する方針だ。当然ながらその先には店舗網の大幅な縮小が視野に入る。
特に、みずほFGは住宅ローンなどのビジネスを地方では提携地銀に任せ、縮小する方針を打ち出している。地域ごとにROE(自己資本利益率)を算出して、厳しく管理する体制を敷く。今後は中長期での閉鎖店舗の見極めのために、店舗ごとのROE算出も視野に入れており、不採算店舗の切り捨てを徹底する。要は、店舗の採算性が一目でわかるようにすることで、「お荷物店舗」は有無をいわさずに閉鎖できるという理屈だ。
みずほFGは今年からソフトバンクとスマートフォンで申し込みから口座振り込みまで完結する個人融資事業を始める。消費者金融に近い事業形態だが、店舗は持たず、人件費もほぼゼロ。その分、金利を安くできる。
人工知能(AI)の活用やビッグデータ分析の精緻化が進み、通常の銀行業務も融資や決済分野に限れば、店舗を持つ必要は自然となくなる可能性を秘める。ますます店舗網の役割は小さくなる。
地方支店という必要固定費が「不要」に?
三菱東京UFJ銀行も本音は同じだろう。1月、日本経済新聞の連載記事には「他のメガバンクと店舗を共同運営してはどうか」という中堅行員の言葉が踊り、支店行員を刺激したという。店舗網をライバル行と相乗りにしてしまうという発想だが、こうした記事が金融機関と親密な関係にある日経新聞に平然と載ってしまうあたり、本店が支店を単なる固定費としか思っていないことの証左だろう。
地方では支店を大量に閉鎖し、一部の富裕層向けの資産運用ビジネスと優良企業向けの資金供給に事業を絞る。メリハリをつけたビジネスモデルといえばそれまでだが、3メガはいずれも地方創生を掲げ、地方自治体と連携協定を結ぶ。常日頃から「大企業だけでなく、地方の産業を支える」という威勢のよいお題目を掲げているが、地方の店舗を切り捨てて利益を底上げする姿には、“産業の黒子”の矜持はまったく感じられない。
(文=編集部)