日常でより多くの幸福感を得る諸条件とメカニズムの研究結果…フローと消費者行動分析
趣味や遊びなど、好きなことをしていると、没頭して時間の経過を忘れてしまうことがあります。心理学者のチクセントミハイはこの状態を「フロー(flow)」と呼び、1975年にフロー概念を提唱しました【註1】。フローは、活動自体を楽しむ「自己目的的経験(autotelic experience)」のことで、資格、勝利、ステータスなどの外的な目標の達成ではなく、フロー状態を維持することを目的としています。
ただし、フローを体験するためには、活動について、良いプレーをする、良い演奏をするといった明確で具体的な目標があり、そのために何をするべきかをわかっていて統制感があること、そして自分の活動の良し悪しの判断がすぐにできること(フィードバック)が必要になります【註2】。
また、その活動はチャレンジ性が高く、それに見合ったスキルが自分にあると感じられる必要があります。このチャレンジとスキルの水準のバランスは大事で、チャレンジのほうが高いときにはストレスや不安を感じ、スキルのほうが高いときには退屈に感じます。したがって、スキルが上がればチャレンジを上げ、スキルが低い場合にはスキルを上げていくといったように、チャレンジとスキルを発展させていく学習の過程でフロー状態は持続されます。
さらに、フロー状態にあるときには、時間が気にならなくなるため、実際の時間の流れとの一貫性がゆがめられる「時間感覚の喪失」と、すべてを集中させるので、我を忘れる「自我の喪失」が生じます。そのため、幸福感は活動中ではなく、あとで振り返ったときに得られます。これらの要素を持ち、かつ深いフローが得られる活動の例としては、チェス、ロッククライミング、作曲などが挙げられています。
マイクロフローについて
チクセントミハイは、自身が「マイクロフロー」と呼んでいる、日常的な浅いフローの存在も説明しています【註1】。考えごと、テレビ番組の視聴、音楽鑑賞、読書、たあいもない会話、いたずら書き、喫煙、ウインドウショッピングなどの活動は、チャレンジ性が低く高いスキルも必要としませんが、人によっては楽しく感じ、フローが生じるようです。
日常的な活動を対象とした調査からは、フローを体験しやすい活動はウォーキングやジョギング、スポーツ、趣味など、自らが積極的に行うものであることが明らかにされています【註2】。車の運転からフローを体験する人もいるようです。