足元の米国の株式市場は史上最高値圏で推移している。それに対して、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー米イェール大学教授をはじめ多くの専門家は、「株価が割高だ」と指摘している。それでも、投資家はこの強気相場が続くと先行きを楽観しているようだ。なかでもハイテク銘柄への期待は強い。
そのなかでも、アマゾンの存在感は群を抜いている。すでにアマゾンが提供するクラウドシステムは、市場の30%程度のシェアを誇っている。また、スポーツ用品大手のナイキは、アマゾンでの直接販売を行うことを決定した。着実にビジネスラインアップは増え、アマゾンの業務は強化されている。
同社の特徴の一つは、他の業界のビジネスを自社内に取り込もうとしていることだ。アマゾンは、独自の生態系=エコシステムをつくり、広げようとしている。その結果、わたしたちの日常生活に占める特定の企業の存在感はこれまで以上に大きなものとなるだろう。
あらゆるものを、のみこむアマゾン
アマゾンは、自社が影響力を及ぼすことのできる市場を拡大しようとしている。これがアマゾンの成長戦略だ。一言でいえば、規模の拡大だ。アマゾンは特定の市場、業界などを念頭に置いて規模の拡大を目指しているのではない。一人、あるいは一社でも多くの顧客(ユーザー)を確保する可能性があると考えられる分野に積極的に進出している。
言い換えれば、アマゾンはネット通販、クラウドコンピューティングなどのIT技術を基礎にして、人々が欲しいと思うコト・モノを生み出そうとしている。生鮮食品を家に居ながらにして買うことができれば便利だ。ただ安い品を手に入れるのではなく、できるだけクオリティの高い食材を、楽をして買いたいという根源的な欲求も高まっているのではないか。そうした人々に対して、アマゾンは解決策を示し、自社のユーザーになってもらおうとしている。
その一例が、アマゾンによる米高級食品スーパーのホールフーズ・マーケットの買収だ。アマゾンは単に売るのではなく、より安く、良いものを、効率的に消費者に届けることを目指している。アマゾンはITと従来の物流システムを融合させ、“物流革命”を起こそうとしているともいえるだろう。