日本を脅かすIT大国・中国の急成長…圧倒的な先進性、ユーザー規模は数億人
米国との対比から見えてくるデジタル先進国の中国進展
ITサービスやデジタル産業というと、アップルやグーグル、フェイスブックのようなシリコンバレーを中心とした米国市場が唯一無二の先進市場として認識されがちである。しかし実情はやや異なる。GDPの伸びや自動車販売台数の増加において肩を並べるにとどまらず、デジタル領域についても実は中国が、米国に匹敵する巨大な先進市場へと急成長しているのだ。
たとえば、国際連合貿易開発会議が発表した最新データによると、B2CのEC市場規模(2015年)は、中国が6,170億ドルであり、日本の1,140億ドルやドイツの930億ドルをはるかに上回って米国の6,120億ドルと並ぶ圧倒的な規模を誇る。これに対し、今まで中国EC市場はバブル状態だという懸念の声も一部で上がっていたが、最近はその見方も変わりつつある。米ゴールドマン・サックスが17年に発表した最新レポートによれば、中国EC市場はこの先も高い成長を持続し、20年には現在の2倍以上の1兆7,000億ドルにまで増加すると予測されている。
また、中国EC市場の勢いがバブルではなく底堅いものであることは、基盤となる人材やテクノロジー面での厚みからも間違いなさそうだ。たとえば、国別のICT(情報通信技術)エンジニア数を見ると、日本の103万人に対して中国では201万人も存在する(※1)。また、データ・サイエンティストとなり得る高度な分析訓練を受けた大卒者数も、日本では約3,000人だが、中国には約1万7,000人もいる(※2)。これら2つの人材にまつわる数字は、いずれも米国に次ぐ2位の人数規模だ。
さらには、AI(人工知能)関連の特許出願数(10年から14年の累積件数)についても、日本の約2,000件に対し、中国はここでも2位と米国の下に順位をつけ、8,000件以上も申請している(※3)。
以上のデータから、量的な面において中国が米国に次ぐIT強国となっていることが見えてくる。今年の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に出席した中国の習近平国家主席は基調講演で、「AIなどのイノベーション活用によって世界経済の成長を牽引していく」といった主張をした。これはまさに近年の中国が国を挙げてAIを中心としたデジタル領域の研究開発にも力を入れていることを示している。