日本を脅かすIT大国・中国の急成長…圧倒的な先進性、ユーザー規模は数億人
イノベーションとスケーラビリティ(大規模化)の両立
これまで日本企業は、デジタル領域に関しては、米国の市場と企業を両方の目で観察することが多かったが、今後は片目で米国を追いつつ、もう一方で中国についてもベンチマークすることが有効だろう。
かの大国から学べる点は多い。その最たるものの一つは、イノベーションとスケーラビリティ(大規模化)の両立にあると考えている。テンセントやアリババのように中国の先進企業が、日本企業と同様、デジタル化によるイノベーションの取り組みに注力していることは前述した通りだ。
一見すると両者に大きな差はなさそうだが、彼らはその取り組みをニッチなマーケットとして終わらせず、いかに早期に数億人単位の市場へと大規模化(スケーラビリティ)させるかの意識が非常に強い。
日本企業の場合、既存ビジネスに影響を与えない範囲内で小規模のトライアルを実施し、結果に合わせて徐々に規模を拡大していく。それに対して中国企業の場合は、まずは結果の出やすい特定セグメント向けに注力するものの、矢継ぎ早にその後どう対象セグメントを広げるか、どのように外部を巻き込んで自社を中心としたビジネスのエコシステムを構築し、数億人規模のユーザーに拡大できるかという点の意識が強く、そのための投資もいとわない傾向にある。
日本と中国ではベースとなる市場規模が異なるため単純な比較はできないが、それを差し引いても、イノベーションとスケーラビリティをトレードオフせざるを得ないものとしてあきらめず、その壁をどう突破して両立させるかに主眼を置いていくことが重要だろう。
(文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング 執行役員)
※1 IPA(情報処理推進機構)「グローバル化を⽀えるIT⼈材確保・育成施策に関する調査」 2009年
※2 Big data: The next frontier for innovation, competition, and productivity(McKinsey Global Institute; May 2011)
※3 アスタミューゼ調べ
※4 2017年5月末時点での時価総額