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山田まさる「一緒に考えよう! 超PR的マーケティング講座」

金鳥とダイキンと日本の夏【完全無欠のドキュメンタリー的PR戦略】  

文=山田まさる/インテグレートCOO、コムデックス代表取締役社長

 たとえば、16年の夏はSNS上で「夏場にエアコンをつけっぱなしで運転したら電気代が安くなった」という情報が拡散したことをきっかけに、「エアコンをつけっぱなしにするのと、こまめに入り切りするのでは、どちらが安くなるか」という疑問がネットで話題になっていた。その問いに対して、実際に比較実験を行い「答え」を提供した。

「夏の日中、9:00~18:00の時間帯では、30分程度の外出ならばつけっぱなしの方が電気代も安く、省エネにもなる」「また、9:00~23:00の一日で比較した場合、つけっぱなし運転とこまめな入り切り運転では、こまめに入り切りする方が安くはなるが、その差額は1日あたり35円程度」というものだった。

金鳥とダイキンと日本の夏【完全無欠のドキュメンタリー的PR戦略】  の画像2ダイキン HP」より

 今年の夏は、「熱帯夜の寝室でのエアコンの運転」「(室内の)熱中症対策」をテーマに、引き続き答えを提供し続けている。その鍵を握るのが「湿度」のチェックである。エアコン=温度設定という思い込みがあるが、同じ「28℃」でも、湿度次第で、快適性の体感は大きく変わる。だから、蒸し暑い日中や寝苦しい熱帯夜などは、温度・湿度の両方をチェックすることが大切なのだ。

 このような調査や実験など、一つひとつの取り組みは枝葉であり、戦術だ。これ以外にも、空気に関わる動画を制作する、イベントを開催する、巨大屋外広告やモニュメントをつくるなどさまざまな施策を重ねている。

 問題は、仕掛ける行動自体が、大きなドキュメンタリーを構成しているという自覚を持つことだ。実験を行う「意図」や、動画を制作しイベントを企てる「姿勢」を通して、一つひとつの施策への「こだわり」が問われるのである。

 だから、PR発想で物語をつくるときには、単発の成果のための仕掛けを考案するだけにとどまらず、毎年収穫を繰り返すことができる大きな木をイメージしてもらいたい。PRは、植物を育てるように日々手間をかけて、日差しや雨風に耐えて収穫を重ねることを目指す農耕的な仕事なのだと、私は考えている。決して狩猟的なものではない。そう思うと改めて、いかにPRの木の「根幹」が大切かを痛感するのである。
(文=山田まさる/インテグレートCOO、コムデックス代表取締役社長)

山田まさる

山田まさる

株式会社インテグレートCOO、株式会社コムデックス代表取締役社長

1965年 大阪府生まれ。1988年 早稲田大学第一文学部卒業。1992年 株式会社コムデックス入社。1997年 常務取締役、2002年 取締役副社長就任。2003年 藤田康人(現・株式会社インテグレートCEO)とB2B2C戦略の立案に着手。2005年 食物繊維の新コンセプト「ファイバー・デトックス」を仕掛け、第2次ファイバー・ブームを巻き起こした。同キャンペーンは、日本PRアワードグランプリ・キャンペーン部門賞を受賞。2007年5月、IMC(Integrated Marketing Communication)を実践する日本初のプランニングブティックとして、株式会社インテグレートを設立、COOに就任。2008年 株式会社コムデックス 代表取締役社長に就任。同年「魚鱗癬」啓発活動にて日本PRアワードグランプリ・日常広報部門最優秀賞受賞。著書に『スープを売りたければ、パンを売れ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『統合知~“ややこしい問題”を解決するためのコミュニケーション~』(講談社)、『脱広告・超PR』(ダイヤモンド社)がある。


株式会社インテグレート

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