130年前からあった「ブックカフェ」
近年になって脚光を浴びているブックカフェだが、実は「付加価値」として「本」を提供しているカフェは130年前からあった。1888年に東京・下谷西黒門町(現在の台東区上野)に開店した「可否茶館」(かひさかん)は、店に国内外の新聞、書籍も揃えていた。同店は存在が確認される日本最古の喫茶店だ。
また、明治時代後期から人気を呼んだ「ミルクホール」という業態は、温めたミルクにコーヒーを入れて提供するようになり、店内には新聞や雑誌、官報をそろえ、お客はそれを自由に読みながらミルクコーヒーを飲んだ。
もともと外国から日本に入ったコーヒーは、たとえばタバコやチョコレートといった異国の嗜好品とは相性がいい。ただし「嫌煙権」が社会常識となり年々喫煙者が減るタバコや、人気は高いがカロリーや糖質が気になるチョコレートに比べると、本は最も親和性が高く、来店客を獲得しやすいといえる。これまでも個人店では、店主の目利きで本を揃えて、コーヒーを提供する小規模なブックカフェはあった。
ただし、ブックカフェが本の売れゆきに大きく貢献するかは未知数だ。現在の多くの消費者の行動は「活字離れ」ではなく「本の購買離れ」だ。スマートフォンで読むインターネットニュースも、主体は活字で、ビジネスやプライベートで多くのメールを打つ現代は、日常的に活字に触れている。一方で、好きな本を所有したい人以外は、図書館などを活用する。
梟書茶房型ブックカフェの2号店の計画については、ドトール側も慎重だった。
「書店の一角にカフェを出店するのは『ドトールコーヒーショップ』や『エクセルシオールカフェ』など24店舗で展開していますが、梟書茶房のような店は、立地や諸条件が合わないと展開できません。そもそも店名の『梟』も、『池袋』にある、販売する本がすべて『袋とじ』、そして『かもめブックス』と同じような親しみを込めて『ふくろう』という鳥の名前を冠した経緯があり、別の店に向くかも不明です」(同)
今回の店に限らず、付加価値として正統的なブックカフェの人気は今後も続きそうだが、カフェに本を置くのは、「人が集まる場」の装飾的な位置づけになるかもしれない。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)