安倍首相、退陣なら不動産市況低迷の可能性…この1カ月、小泉退陣直前と同じ動き
政権が安定している、あるいは首相の在任期間が長いという、政治的に順調な時の不動産市況は好調なことが多いといわれています。もちろん、不動産市況の波の要因にはさまざまなことがありますが、政権安定は投資リスクの低減をイメージさせ、また金融緩和のような不動産に好影響を与える政策を行っている時には、好況が維持されています。上記のなかでは、(2) 小泉首相と(6)安倍首相の時がそれに該当します。
衆議院選挙と不動産市況
選挙と不動産市況という、一見そんなに関係のなさそうなものを分析しようという試みは、あまり行われていないようです。地価などは1年に1回発表される類のものですし、また住宅価格指数は2カ月遅れの発表(例えば、7月分が9月末に発表)のものが多いですから、選挙前後のダイレクトな変化は見られません。そのため、ここでは動きの速いREIT(不動産投資信託)に着目してみました。
図2は、近年6回の衆議院解散、選挙の日前後における東証REIT指数の推移です(解散日を100として計算)。
これを見ると、解散1カ月前から解散日までに下がったパターンは2回。小泉首相の最後の選挙と今回の選挙の時です。先に書いた長期政権下での解散の時です。長期政権から変化が起こるかもしれない、という安定から不安定に変わるかもというリスク警戒の表れだと想像できます。
一方、解散後の上昇はやや大きめの上昇が2回。前回(47回)14年の安倍内閣の時と民主党が惨敗した12年末の野田内閣の時(46回)です。12年末の時は、民主党政権への失望からの脱却、政権交代への期待がこれからの市況の好転をイメージさせました。また、前回の時は不動産市況が上昇基調のなか、金融緩和等の不動産にいい影響がある政策の維持が見込まれたことによる期待だと思われます。
さて、今回はどうでしょうか?
図2の点線が今回の選挙における解散前1カ月~解散日までの流れです。与党と野党、第三極の3つの対立構造が今回の選挙でははっきりし始めてきました。執筆時の流れでは、与党(自公)は大勝はないものの、ある程度の水準で議席を獲得しそうな情勢のようです。
そうだとすると、REIT指数の今後の動きは総選挙に向けては横ばいが続き、その後選挙日~国会召集~組閣までは、やや上昇ではないかと予想します。
いずれにせよ、衆議院選挙はなんらかの影響があると思います。注目の選挙が近づいてきました。
(文=吉崎誠二/不動産エコノミスト、社団法人住宅・不動産総合研究所理事長)