10月に入り、国内企業の不祥事が相次いで発覚した。日産自動車では無資格の従業員が完成車の検査を行っていたことが発覚した。これに続いて、神戸製鋼所では同社が事業成長の要=戦略事業と位置付けてきたアルミ製の部材が、顧客の求める品質基準を満たしていなかったことが発覚した。
両者に共通する問題は、長年の間企業の経営陣が不正を認識できていなかったことだ。日産のケースでは国土交通省の検査によって検査の不正が明らかになった。また、神戸製鋼の場合は現場管理職からの報告によってデータの改ざんが発覚した。
長年にわたって安全性などの基準を満たしていなかった恐れのある製品が消費者や企業に供給されてきたことを考えると、社会的な影響は大きい。“企業の社会的責任”が求められているなかで、こうした不祥事が続いていることは軽視できない。日産、神戸製鋼をはじめ、問題が発生するたび企業統治(コーポレートガバナンス)を強化し、コンプライアンスを徹底すべきとの論調が増える。そこに異論の余地はない。加えて、経営者にどのような心構え、取り組みが必要かも議論されるべきだ。
度重なる企業の不祥事=経営の機能不全の表れ
日産と神戸製鋼の不祥事発覚には共通点がある。それは、組織ぐるみで検査やデータの改ざんが行われていたということだ。本来であればこうした不正行為は、内部統制や業務監査によって発見されるべきだった。いずれの場合も、組織内部に設置された検査機能はワークせず、問題は放置されてきた。
これは、企業の経営が機能不全に陥ってきたことが考えられる。どのようにすれば不祥事をなくすことができるか、さまざまな論点がある。しかし、ここでは論点を広げるのではなく、焦点を絞る必要がある。
不祥事を防ぐためには、経営者の強い“コミットメント”が必要である。それは、目標を実現するために、自ら責任者として能動的に取り組むことだ。経営者の役割は、企業全体の大きな方向性=戦略を示し、組織の進むべき方向性を示すことである。その戦略を実行するなかで、各事業部にどのようなリスクがあるかを事前に把握し、業務の確実な執行を実現しなければならない。そのために必要な取り組みを策定し、実際に指示していくことが経営者の役割だ。