JDIは16年に資金難に陥り、有機ELへの投資を名目に、産業革新機構から750億円の支援を受けた。しかし、液晶パネル市況の悪化や需要の減退で、この資金は底をついた。
そのため、革新機構の債務保証を受け、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行の主要3行から1100億円のコミットメントライン(融資枠)を新たに設定した。JDIの実態は、資金がショートしそうになるたびに革新機構に駆け込む“オオカミ少年”だ。
今回の契約には、ある条項が盛り込まれた。JDI株を20%以上持つ企業が現れるか、17年3月期末で35.5%保有する革新機構の出資比率が20%以下に低下した場合、革新機構は保証契約を解除できるというものだ。出資比率の変更が起きた場合、金融支援した750億円を引き揚げる。そのため、「革新機構はJDIを売却して手を引く準備に入った」(関係者)と受け止める向きもある。
スポンサー探しのポイントは、2000億円から3000億円の成長資金をどうやって捻出するかにかかっている。ホンハイや中国のパネルメーカーの天馬微電子が、スポンサー候補として浮上している。ホンハイがスポンサーになれば、シャープとJDIの経営統合の話が蒸し返されることになる可能性が高い。JDIとシャープを“結婚”させてシャープを実質的に救済しようというシナリオは、経済産業省・革新機構が書き上げたが、最終局面でホンハイにシャープをさらわれたため実現しなかった経緯がある。
「革新機構会長兼CEOの志賀俊之氏は、自動車業界の出身(前日産自動車副会長)だから、まったく何もわからない。経済産業省の言いなりだろう。経産省は中国への売却は不可というだろうから、もしどこも救済するところがなければ法的整理をするしかない。法的整理したからといって、困るメーカーはない。もはや液晶パネルはコモディティ化しているし、JDI以外から買える。元の親会社である日立製作所、東芝、ソニーでさえJDIを必要としていない」(電子部品担当の証券アナリスト)
法的整理になって困るのは、JDIとタッグを組んできた革新機構、ひいては経産省だけだろう。出資金のほかに、750億円の金融支援、銀行に対する債務保証1100億円が重くのしかかる。損失は税金で補塡しなければならなくなり、責任問題に発展するためだ。
エレクトロニクス業界からは、「産業革新機構が筆頭株主である限り、JDIの再生はない」といった辛辣な指摘が出ている。官製ファンドの革新機構が手掛けた再生案件で成功したものは数少ない。
JDIの再生に失敗すれば、シャープをホンハイに奪われたのに続き、革新機構は連敗の憂き目を見ることになる。
(文=編集部)