不正発覚後も不正継続
そもそも無資格者の完成検査が9月18日に発覚し、その後、再発防止策を実施して「現在は完全に正常化している」(西川社長)と明言していながら、その後も国内5工場で無資格者による完成検査が継続されるなど、日産の順法意識の低さが際立っている。国交省の奥田哲也自動車局長は「ただちに是正したと発表しながらきちんと行われていなかったことや、完成検査員の試験に不適切な扱いがあるなど、誠に驚きを禁じ得ない」と、日産を強く批判した。
これら不正の原因について調査報告書では、完成検査員の不足や制度に関する規範意識の低さに加え、「完成検査を実施する現場と工場、日産本社の管理者層との間に距離があり、管理者層が問題を把握して対処することを困難にした」と指摘。日産では、必達目標(コミットメント)を掲げて、達成できなければ懲罰人事が待っているカルロス・ゴーン氏の経営手法が浸透、経営陣も管理者層も「とにかく目標を達成する、利益を上げる」ことだけを考えている。生産台数を増やすのに完成検査員が不足しているといったことは管理者や役員にとって些細な問題で、仮に現場が声を上げたとしても「現場で解決しろ」と言われるのは明白だ。
ただ、西川社長は17日の記者会見で「ゴーン氏が日産に来る以前から行われていた」とした上で「国内生産台数は200万台あったのが今は100万台で右肩下がり。(不正の)動機とは考えにくい」と述べ、ゴーン氏が掲げる必達目標を達成するために無理な生産を迫られて不正に手を染めたとの見方を真っ向から否定。
「ゴーン氏が強いリーダーシップを持っていることは認識しているが、下から意見を聞くことは意識してきた」と述べ、経営改革に向けて、中堅や若手で構成する部署を横断した組織「クロスファンクショナルチーム」などを代表例に、「下からの意見を集める努力をしてきたのに、なぜ完成検査員の不足の問題が上がって来なかったのか」と首を傾げる。
しかし、調査報告書では現場と管理者層との距離について「(日産の)目標到達を通じて課題を解決するということを重視する文化」に原因の一部があるとはっきりと指摘している。