しかし、こう問題提起をするとおそらく食品スーパーの責任者は「うちは108億円の黒字だよ。104億円の赤字を出している大型スーパー部門が足をひっぱっているんだ」と主張することであろう。
そう、私から見れば五十歩百歩の“うすーい”業績なのだが、確かに食品スーパーはわずかに黒字、大型スーパーはわずかに赤字という業績の差が存在している。
実はこの差は、アマゾンエフェクトをどれだけ受けるかの差である。食品スーパーは生鮮食品が売上の中核にある分、ネット通販の悪影響をそれほど受けないという強みがあるのだ。一方で大型スーパーの場合、生活用品、衣料、寝具、電気製品などネット通販に顧客を奪われたり、安売り競争に巻き込まれたりという悪影響を受けやすい商品の比率が高い。ダイエーが“産業再生機構行き”になった際にも「食品スーパーだけに集中すれば生き残れる」という議論があった。それくらいアマゾンエフェクトは小売業の業績の足をひっぱっているのだ。
ところがアマゾンは、アマゾンフレッシュを通じて生鮮食料品の販売も始めた。実はこの「食品スーパー事業だけは黒字」という状況もいつまで続くのかはわからないのだ。
コンビニエンスな事業は儲かる
大手小売業で一番気を吐いているのは、イオンのライバルであるセブンイレブンだ。一方のイオングループにもコンビニはある。ミニストップだ。
ミニストップの業績は上半期で1056億円の売上高で14億円の黒字と、利益率では食品スーパーよりもずっといい。しかし、規模的にはセブンイレブンに大きく差を開けられているせいで、利益額は全体に大きな影響を与えるほどのものではない。
しかし、実はイオンにはミニストップよりもずっと規模の大きいチェーンストアがある。それがウエルシア薬局だ。いわゆるドラッグストアチェーン店である。
アメリカには日本のようにコンビニ文化はない。セブンイレブンはアメリカから来たが、アメリカのセブンイレブンは日本よりもずっと数は少なく、コンビニといえば主にガソリンスタンドに併設された小規模小売店というイメージだ。
ニューヨークの市街地を歩くとわかるが、コンビニに代わって日常の小さな買い物の拠点になっているのがドラッグストアだ。そしてウエルシア薬局は、このアメリカ最大のドラッグストアであるウォルグリーンズのビジネスモデルを参考に日本の薬局を再編した小売業態だ。