三井物産は“安永社長色”が前面に
三井物産は安永竜夫社長と飯島彰己会長の“二頭政治”から、安永氏がやっと人事権を奪取したようだ。1月22日に発表した新年度(4月1日以降)の副社長以下の人事に、それが如実に表れた。
安永氏は15年4月、32人抜きの54歳で三井歴代最年少社長に就任した。同氏は83年の入社。加藤広之副社長(79年入社)、本坊吉博副社長(79年入社)、鈴木愼副社長(81年入社)、田中聡副社長(81年入社)や専務などは全員、先輩にあたる。社内取締役9人のなかで、60年生まれの安永氏は最年少だった。
飯島氏をはじめとした古参役員が退陣して、84年以降に入社した幹部を何人抜擢できるかが「安永氏の腕の見せどころ」といわれ、注目されてきた。
伊藤忠に比べて三井は元気がない。18年3月期の最終利益を伊藤忠並みの4000億円に引き上げたが、株価の上昇のテンポは鈍い。すでに伊藤忠に株価で逆転を許し、17年11月には、とうとう住商にも抜かれ業界4位となった。
そこでようやく危機感が出てきたようだ。「飯島会長が代表権を手放し、安永社長に全権を委譲しない限りダメ。安永さんより年長の役員には総退陣していただかないといけない」(若手幹部)という気運が芽生えてきた。
4月1日付で代表取締役兼副社長執行役員の加藤、本坊の両氏と代表取締役兼専務執行役員兼CFO(最高財務責任者)の松原圭吾氏が、取締役になり6月21日の株主総会後に顧問に退くことが決まった。また、同日付で専務執行役員欧州・中東・アフリカ本部長兼欧州三井物産社長の久米敦司氏、同中国総代表兼三井物産中国董事長の金森健氏が顧問となる。
6月21日付で代表権を持つのは、専務執行役員の竹部幸夫氏、常務執行役員兼CFOの内田貴和氏、常務執行役員の堀健一氏の3人である。飯島氏は会長続投となるが、19年春の人事が焦点となると、すでに取り沙汰されている。
専務執行役員米州本部長兼米国三井物産社長の高橋康志氏は、4月1日付で副社長執行役員になる。ほかにも、“安永人事”といえる幹部社員の異動が随所にみられる。