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マツモトキヨシ、深まる中国人客依存リスク

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授

 ドラッグストアが激戦時代を迎えているといった見方が増えるなかで、マツモトキヨシは独自のマーケット開拓を進めることができているともいえる。競合他社もインバウンド需要の取り込みを重視してはいるが、中国人観光客などにとって“マツキヨ”で買い物をすることが一種の楽しみ、ステータスになっている部分があることも無視できない。

無視できない円高リスク

 
 マツモトキヨシの成長ストーリーは2つにまとめられる。ひとつ目は、売り上げの10%程度を占めるまで増えた“インバウンド需要”の取り込みだ。もうひとつは、不採算店舗のリストラである。後者は、ドラッグストアに限らず多くの業界・企業が抱える問題である。どうしても、マツモトキヨシはインバウンド需要の取り込みに注力しているというイメージが強くなりがちだ。インバウンド需要を重視した経営戦略は、事業リスクを上昇させるだろう。

 特に、為替相場で円高が進みやすくなっていることは軽視できない。ドルなどの主要通貨に対する円高が進む場合、新興国の通貨は円に対して減価する可能性が高い。それは、中国などからの観光客の購買力低下に直結する。また、マクロベースでみた経済環境が悪化する場合、海外への渡航者・旅行者は減少する。中国経済は安定を維持しているものの、経済指標からは回復の勢いがやや低調になっていることが窺われる。そのトレンドが続くと、徐々に中華圏を中心とするインバウンド需要にはブレーキがかかりやすい。

 円高と海外経済の変調が進むことは、マツモトキヨシの業績悪化に直結する問題と考えるべきだ。それを食い止めるためには、顧客層の多様化(リスクの分散)に加え、業界の競争に先行する取り組みが求められる。

 これまで、マツモトキヨシは業界のなかでも異端児的な存在感を示してきた。すでに、第一生命と提携し医療保険の販売や、共同での保険商品開発も目指されている。米国では、ドラッグストア大手のCVSヘルスが医療保険会社を買収し、わが国には見られないビジネスモデルの変化が進んでいる。それは、新しい取り組みを進め、新サービス、新事業を育成することで成長を目指そうとする考えの表れだ。マツモトキヨシの成長ストーリーに従来にはない事業の開発が加われば、市場からの評価はさらに高まる可能性がある。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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