一見、運営費で弁償本を購入しても問題なさそうに思えるが、行政運営上はあってはならないことだ。
なぜならば、すでに弁償本の代金を徴収しているため、本来は「預り金勘定」から支出すべきなのに、公金から支出すれば“二重取り”になってしまうからだ。
では、利用者から預かった弁償金は、いったいどこに消えたのだろうか。
佐俣氏が別件で入手した資料である、CCCが多賀城市に提出した「平成28年度収支決算書」をみると、収入欄の5番に「弁償本預り金」という勘定が立っており、9万1358円が計上されている。ところが、支出欄には「弁償本預り金」に対応する支出が見当たらない。
一方で、「資料購入費」という勘定があり、予算1585万9800円、決算額は1589万2487円とある。
同館では、この資料購入費と水道光熱費のみ精算対象としているため、CCCはこの数字を基に、余った予算は市へ返納額を通知。それを受けた市がCCCの決算数字を精査したうえで「適正である」と認定している。
ところが、この公金からの支出である「資料購入費」の詳しい内訳を示したリストの中に「弁償本」が含まれていた。そのため、「弁償本預り金」が減らないのだ。
「そもそも弁償金は、いわゆる『預り金』であり、通常の『収入』とは異なります。こうした会計処理を認めたことは、CCCによる『公金と弁償金』の『二重取り』を多賀城市教育委員会が『適正』と認めたことになり、その責任は重大です」(佐俣氏)
「預り金」は事業収入には含めないのは常識だ。別枠でその収支を管理しなければいけない。それにもかかわらず多賀城市は、そのような内容が記載されたCCCの決算報告を、「適正」と認めているのは不当であると市民が主張したのは、至極もっともなことだろう。
何より佐俣氏らが驚いたのは、弁償本の扱いである。市が別に開示した「弁償本台帳」を見ると、弁償本は全部で66冊もあることが判明。そのうち、1年を経過してもなお購入されていない本は50冊もあり、全体で75%余りが購入されていない。大半が放置されているといっても過言ではない。
下の表は、その弁償本台帳だ。たとえば、No.1『なかまがいれば』という本を利用者が紛失し、図書館は弁償代金864円を2016年5月16日に受け取っている。しかし、購入金額欄は空欄で、翌年3月の時点で購入していないことがわかる。No.2以降も、大半が同じく購入されておらず、冒頭から15冊のうち購入されているのはたった4冊しかない。