金額にすると、弁償本の預り金9万1358円のうち、2017年3月23日時点で購入されていたのは3万672円分(監査委員の認定額は2万9376円)。だが、これも公金から支払われていたため、CCCは預り金を全額保持しつつ、購入すべき本を購入していなかったのだ。その点を佐俣氏は、こう糾弾している。
「図書館の本は市民の税金で購入されており、いわば市民の財産です。また、これらの本を借りたいという人もいるでしょう。それなのに、指定管理者であるCCCは、極めてずさんな管理をしているのです」
さらに佐俣氏は未購入の50冊について、その後の購入状況がわかる文書を市教委に開示請求したところ、結果は「不存在」だった。つまり、市教委は未購入の弁償本についてフォローを行っていないのだ。いかに市教委が、図書館運営業務を指定管理者任せにしているかがわかる。
弁済金受領は違法
市民グループが、以上のような事実を証明する文書を添えて監査請求したところ、市教委は弁償本の購入費用が含まれていた資料購入決算額に誤りがあったことを認めた。ただし、資料購入費については、決算額が予算額を上回る赤字状態だったため、「返納額は生じない。よって、違法な支出には当たらない」と弁明した。
また、弁償本預り金の返還を求めることについても、「指定管理期間中で、繰り越し使用させることが便宜である」として、そのまま預けて翌年度以降の購入費に充てさせることを示唆した。
監査委員会も、実質的な損害は生じていないため、指定管理料の支出に違法性・不当性はないとしたものの、弁済金の返還請求については市教委の主張を全面的に却下した。とりわけ、指定管理者の弁済金授受については、一部例外を除いて、私人による公金の徴収を禁じた地方自治法第243条違反を指摘。「例外的に認められる場合(地方自治法施行令第158条)にも該当しない」として、違法性を認定。そのうえで、決算額の誤りを指摘し、本来、市の資産であるはずの預かり金6万3278円をCCCに返還させるよう、多賀城市教育委員会に勧告したのである。
では、ほかの図書館では弁償本はどのような扱いになっているのだろうか。
「図書館では、紛失・破汚損本の処理は、現物で弁償してもらうのが原則です。現金で弁償するというのは、かなり例外的な措置です」(東京の図書館をもっとよくする会・池沢昇氏)
実際に都内で指定管理者が運営している図書館に聞いたところ、どこも「現物弁償」が原則で、現物がなかなか入手できなかったり、当該利用者がどうしてもと希望した場合にのみ現金での弁償が認められているという。
「弁償本の代金は、窓口で受領することはなく、払込用紙を利用者に送って、それを使って金融機関で納付していただく」(東京・足立区)
「同じ本が買えない場合は、類似の本をこちらで選書しますので、その選書した本を持ってきていただく」(東京・中野区)
どちらにしろ、民間事業者が窓口で弁償する本の代金を直接受領することはないという。多賀城市も同様のルールのはずだが、CCCが指定管理者となった平成28年度は、なぜか現金での弁償が異様に多くなっている。ある図書館関係者は、こう推察する。
「図書館で、弁償本の代金を1年間に66冊分も徴収することは考えられません。一般の図書館では、せいぜい数冊です。しかし、CCCが運営する図書館で、そのような特別な状況が起きている理由は、CCCがもともとレンタル店であって、現金で精算するレンタル店の方式を図書館でもそのまま取り入れているからとしか考えられません。さらに、CCCは追加蔵書として大量の中古本を購入していますから、弁償本代金を新書価格の定価で受け取れば、利益が出る可能性があります」
この件についてCCCにコメントを求めたところ、締め切り日までに回答はなかった。また、多賀城市教育委員会からは「勧告に基づいて対応する」とだけ回答があった。
佐俣氏は、今回の件をこう振り返る。
「自治体が厳格に監視しないから、こういうことが起きるんです。指定管理者に丸投げしてしまうと、やりたい放題になってしまいます。そうした事態を防ぐためにも、われわれ市民が厳しく監視していかねばならないでしょう」
佐俣氏は、今回の弁償本問題に続いて、別の件でも住民監査請求を行う予定だという。仮にその監査請求が退けられたら、住民訴訟も視野に入れているとのこと。
ツタヤ図書館に関しては、CCCのずさんな運営をめぐって、佐賀県武雄市で2件、神奈川県海老名市でも1件、それぞれ住民訴訟が提起されている。どうやら多賀城市もその後に続くことになりそうだ。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)